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ハチ
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黒板に、くじの結果が貼り出される。
担任
ざわつく教室。
佐伯
前の席を見る。 仲のいいやつがいる。
佐伯
くじを引く。 番号を見る。 17番。 黒板を確認する。 窓側、後ろから二番目。
佐伯
席に向かう。 そこに座っているのは。木村。 あまり話したことはない。
木村
軽く会釈される。
佐伯
座る。 少し、距離を感じる。 それだけ。そのはずだった。 授業が始まる。 ふと気づく。 前の席。 さっきまで仲のいいやつがいたはずなのに。 思い出せない。
佐伯
名前が出てこない。顔も、曖昧。
佐伯
気のせいだと思う。 昼休み。 いつものメンバーのところに行く。
佐伯
全員が、こちらを見る。 でも。 少し、間が空く。 一人が言う。
山口
空気が止まる。
佐伯
笑う。冗談だと思う。
佐伯
でも。誰も笑わない。
山口
佐伯
胸の奥が冷える。 席に戻る。 木村がいる。
木村
なぜか、安心したような顔をする。
木村
佐伯
木村は少し考えて。
木村
意味が分からない。
木村
小さく言う。
木村
佐伯
木村
こちらを見る。
木村
笑わない。 ただ、事実みたいに言う。
佐伯
即答する。 でも。頭の中で。 さっきの違和感が繋がる。 思い出せない名前。知らない目。
木村
佐伯
答えられない。
木村
午後。 授業中。 黒板を見る。 でも、集中できない。 隣の存在だけが、やけに近い。 呼吸。音。気配。 木村が、少し笑う。
木村
佐伯
木村
机を軽く叩く。
木村
放課後。 教室に残る。 佐伯は、もう一度前の席を見る。 空いている。 いや。 最初から、誰もいなかった気がする。
佐伯
否定する。 黒板を見る。 席順の紙。 名前が並んでいる。 佐伯は、自分の名前を探す。 佐伯 17番。 その隣。 木村 その前。空白。
佐伯
さっきまで、人がいたはずの場所。 名前が、ない。 最初から、存在しなかったみたいに。 背後から声。
木村
振り返る。木村が立っている。
木村
佐伯
木村は首をかしげる。
木村
即答。
木村
一歩、近づく。
木村
静かに。
木村
意味が、分かる。 遠い関係は。 切れる。 存在ごと。
佐伯
木村は、優しく笑う。
木村
肩に手を置く。
木村
その手が、重い。 教室を見る。 他の席。 あちこちに、空白がある。 でも。誰も気にしていない。 最初からそうだったみたいに。
木村
小さく呟く。
佐伯
木村は頷く。
木村
黒板を見る。 席順の紙。 その上に。 赤い文字が浮かんでいる。
確定
佐伯の喉が乾く。 木村が、隣に座る。 距離が、近い。 逃げ場がない。
木村
小さく笑う。
木村
その言葉に。 なぜか、安心してしまう。 違和感が、消える。 遠かったはずのものが、どうでもよくなる。 思い出せない名前も。 最初から、いなかったみたいに。
翌日。 教室。 席はそのまま。 空白も、そのまま。 誰も疑問に思わない。
担任
名前が呼ばれていく。 空白の席は、飛ばされる。 当たり前のように。
担任
静かな教室。 誰も、足りないとは思わない。 ただ一つ。 隣にいる誰かだけが。 やけに近く感じる。 その距離だけが。 この世界の全部だった。