テラーノベル
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足音。
ドドドドドッ!!
階段を埋めるみたいに、クラスメイト達が駆け上がってくる。
その顔。
無表情。
怒ってもいない。
焦ってもいない。
ただ。
“正しい処理を実行する”。
それだけが共有されていた。
「走れ!!」
瀬那が、晴翔の腕を引く。
二人は上階へ駆け出す。
屋上のさらに上。
普段使われていない、古い放送室側の通路。
息が切れる。
後ろから、足音が追ってくる。
「何なんだよこいつら!!」
「見るなって言っただろ!!」
「は!?」
瀬那は走りながら叫ぶ。
「おすすめ見続けると同期される!!」
「同期?」
「考え方が揃うんだよ!!」
晴翔の頭に、屋上の光景が浮かぶ。
同じ声。
同じ表情。
同じタイミング。
まるで、人間の形をした一つの空気。
「最初は便利なんだ。嫌われない方法、浮かない会話、正しい距離感。みんな、それを見て安心する」
通路。
夕方の光。
二人の影が長く伸びる。
瀬那の声だけが響く。
「でも、そのうち、“普通じゃないやつ”を弾き始める」
「……」
「空気読めないやつ、ズレてるやつ、関わると面倒なやつ、そういうのを、おすすめが教える」
晴翔の喉が冷える。
おすすめ。
ただの動画じゃない。
“誰を外すか”。
それを、全員で共有する装置。
その時。
ブブッ。
瀬那の体が、一瞬ぶれる。
晴翔の呼吸が止まる。
「……え」
瀬那の肩。
輪郭。
ノイズみたいに、少し透けた。
瀬那は舌打ちする。
「くそ……」
「何だよ今の」
瀬那は答えない。
でも。
顔色がさらに悪くなっている。
その瞬間。
通路のスピーカー。
突然ノイズが走る。
ザザッ……。
そして。
校内放送。
『未登録データとの接続を確認』
二人の足が止まりかける。
『対象:友崎晴翔』
『対象:未登録データ』
名前じゃない。
“未登録データ”。
瀬那の表情が、一瞬だけ歪む。
放送は続く。
『接続強度の上昇を確認』
『正常化を開始します』
その瞬間。
校舎中。
ブブブブブッ!!!
大量通知。
教室。
廊下。
下の階。
どこからも、スマホの振動音が聞こえる。
まるで学校全体が、一つの生き物みたいだった。
晴翔は震える手で、スマホを押さえる。
でも。
画面が勝手につく。
おすすめ欄。
真っ赤。
【危険な関係性を検出】
その下。
写真。
晴翔と瀬那。
放課後の教室。
笑っている。
いつ撮られたか分からない。
その写真に、大きく文字。
【共依存傾向】
次。
【周囲から孤立する危険性】
次。
【早急な関係解消を推奨】
晴翔の呼吸が乱れる。
全部。
二人の関係そのものが、異常扱いされている。
瀬那が、苦しそうに目を伏せる。
「……だから離れろって言った」
「は?」
「俺といると」
声が掠れる。
「お前まで消される」
通路の窓。
夕方。
そのガラスに映る瀬那。
輪郭が、少し薄くなっていた。
晴翔の胸が締め付けられる。
「嫌だ」
瀬那が目を見開く。
「今さら一人にすんなよ」
一瞬。
瀬那の呼吸が止まる。
その瞬間。
ブブブブブッ!!!!
スマホ。
異常振動。
画面。
【警告】
【対象間で強い感情接続を確認】
【正常化に重大な障害が発生しています】
コメント
1件
うわあ、第23話……すごい圧でした。特に「おすすめ」が“誰を外すか”を共有する装置っていう解釈、ゾッとしました。晴翔が「嫌だ」って言い返したところ、あれで瀬那の輪郭が一瞬でも戻った気がして、涙が出そうになりました。もう連載中だとは思いますが、この続きがどう転ぶか本当に気になります。二人の接続が「異常」扱いされる世界、その理不尽さを描くのが上手すぎます……!