テラーノベル
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手が伸びる。
一斉に。
晴翔は反射的に身を引いた。
「触んな!!」
叫ぶ。
でも。
クラスメイト達の表情は変わらない。
怒っていない。
焦ってもいない。
ただ。
“処理する”。
それだけの顔。
担任が、静かな声で言う。
「抵抗は状態悪化を招く」
「……っ」
またその言い方。
人間じゃない。
“異常データ”。
そう扱われている。
美玲が、少しだけ苦しそうに眉を寄せる。
でも。
その手も、ゆっくりこちらへ伸びていた。
晴翔の胸が痛む。
昨日まで、普通に笑っていたのに。
おすすめ一つで。
全部変わる。
その瞬間。
バチッ!!
瀬那のスマホが、突然強く光った。
全員の動きが止まる。
ノイズ。
ザザザザッ!!
画面が乱れる。
そして。
今までで初めて。
“映像じゃない瀬那”が現れた。
屋上の端。
フェンス前。
黒い制服。
少し乱れた髪。
息を切らした顔。
晴翔の呼吸が止まる。
「……瀬那」
クラスメイト達がざわつく。
「誰?」
「え、いた?」
「何で……」
認識が揺らいでいる。
瀬那は、晴翔しか見ていなかった。
「来い」
低い声。
晴翔は動けない。
瀬那が、苦しそうに顔を歪める。
「早く!!」
その瞬間。
全員のスマホ。
ブブブブブッ!!!
異常な通知音。
おすすめ欄。
真っ赤な背景。
【未登録データを検出】
【認識補正を強制実行】
空気が変わる。
クラスメイト達の表情が、また揃う。
「排除」
小さい声。
誰か一人じゃない。
何人も。
「排除」
「排除」
「排除」
晴翔の背筋が凍る。
瀬那が叫ぶ。
「見るな!!」
「え――」
「スマホ閉じろ!!!」
反射的に画面を伏せる。
その瞬間。
世界の音が、急に戻った。
風。
フェンスの軋み。
遠くの車。
クラスメイト達が、一瞬だけ動きを止める。
まるで、糸が切れたみたいに。
瀬那が、晴翔の腕を掴む。
冷たい。
でも。
ちゃんと触れている。
「走れ」
二人は屋上出口へ駆け出す。
後ろで、担任の声。
「待て」
その声。
初めて感情が乗っていた。
焦り。
階段。
駆け下りる。
晴翔は、混乱で息が上がる。
「何なんだよ!!」
瀬那は止まらない。
「おすすめ見るな」
「だから何なんだよあれ!!」
踊り場。
瀬那が、ようやく振り返る。
顔色が悪い。
消えかけみたいに白い。
「最初はただのおすすめだった」
掠れた声。
「でも、みんな従った」
「……は?」
「浮きたくないから」
瀬那は苦しそうに続ける。
「嫌われない話題。
嫌われない態度。
関わらない方がいい奴。
みんな見て、真似した」
晴翔は息を呑む。
「それが積み重なって“普通”が固定された。そこから外れる奴は」
言葉が止まる。
「……消される?」
瀬那が、静かに頷く。
晴翔の喉が冷える。
「じゃあお前は……」
瀬那は少し黙る。
そして。
初めて、弱い顔をした。
「俺は、お前を選んだから」
「……え」
階段の静寂。
瀬那は目を逸らす。
「最初の更新の日。
俺、お前から離れろって出た」
晴翔の呼吸が止まる。
『関わると浮く』
『距離を置くべき』
そんな動画。
きっと、瀬那にも出ていた。
「でも無視した」
小さい声。
「そしたら、俺の方が削除された」
コメント
1件
第21話、読ませていただきました……! 屋上に現れた“映像じゃない瀬那”のシーン、すごくぞくっとしました。今まで画面越しだけだった存在が、ちゃんと息を切らして立っている。その温度差が一気に物語を引き締めましたね。特に「俺は、お前を選んだから」という瀬那の言葉、すごく胸に刺さりました。たった一言なのに、それまでのすべての選択と覚悟が伝わってくる……。次が本当に気になります!