テラーノベル
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階段の踊り場。
息が白くなる気がした。
実際には、そんな季節じゃないのに。
晴翔は、瀬那を見つめたまま動けなかった。
「……俺を選んだ?」
瀬那はすぐ答えない。
下の階。
ざわめき。
足音。
誰かがこちらを探している。
でも。
今はそれより、瀬那の言葉の方が重かった。
瀬那は、少しだけ目を伏せる。
「最初、お前だけだった」
「は?」
「おすすめ見ても、空気変わっても、普通に話してきたの」
晴翔の喉が詰まる。
思い返す。
クラスが、少しずつ変わっていった頃。
おすすめの話題ばかりになって。
“今これ見た?”
“それ危ないらしい”
“関わらない方がいいって”
そんな会話が増えて。
なのに。
瀬那だけ、変わらなかった。
いや。
変わらないようにしてた。
瀬那は、壁にもたれながら小さく笑う。
「だから逆に目立った」
「……」
「“正常じゃない”って」
晴翔の胸が痛む。
その時。
下から、複数の足音。
瀬那の顔が変わる。
「来る」
「どうすればいい」
瀬那は、晴翔のスマホを見る。
「まずおすすめ閉じろ」
「閉じても通知来る」
「見るな」
即答。
「見るほど同期される」
同期。
晴翔は、屋上でのクラスメイト達を思い出す。
同じ声。
同じ表情。
人間なのに。
まるで、一つの答えを共有していた。
「おすすめは“考え”を揃える」
「……」
「最初は小さい。でも全員見る。だから、“普通”が一個になる」
晴翔の背筋が冷える。
“普通”。
みんなが、同じものを見て。
同じ動画を見て。
同じ反応を覚えて。
同じ空気を作る。
そこから外れると。
不要。
排除。
削除。
その時。
ブブッ。
晴翔のスマホが震える。
「見るな」
でも。
画面が勝手につく。
真っ黒。
文字だけ。
【未登録データを確認】
瀬那の顔色が変わる。
次の文字。
【瀬那 柊】
【再観測を開始】
「……っ」
瀬那が舌打ちする。
「早すぎる」
その瞬間。
階段下。
誰かが立っていた。
担任。
でも。
さっきと違う。
表情が薄い。
目の焦点も、少し変だった。
そして。
後ろには、クラスメイト達。
全員、スマホを持っている。
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担任が、静かに言う。
「未登録データを発見しました」
瀬那が、晴翔を庇うように前へ出る。
晴翔は息を呑む。
担任の視線が、瀬那へ向く。
「……認識不能」
その瞬間。
クラスメイト達のスマホ。
一斉更新。
ブブブブブッ!!
おすすめ欄。
【未登録データへの接触は禁止されています】
【認識を乱す恐れがあります】
ざわめき。
「見えない」
「でもいる」
「何……?」
認識が揺れている。
瀬那は、小さく晴翔へ言った。
「まだ完全に同期してない。
今なら逃げれる。
お前は」
瀬那は少し黙る。
そして。
静かに笑った。
「俺はもう、半分消えてる」
その言葉。
冗談みたいに軽く言ったのに。
晴翔の胸が強く痛む。
「ふざけんな」
掠れた声。
瀬那が目を見開く。
「勝手に消えんなよ」
一瞬。
瀬那の顔が止まる。
階段の空気も。
晴翔は、自分でも止められなかった。
「お前だけが普通だったんだよ」
「……」
「皆変わってく中でお前だけだった」
瀬那の喉が、小さく動く。
その瞬間。
ブブブブブッ!!!
異常な通知音。
全員のスマホ。
真っ赤な画面。
【危険】
【対象同士の接続強化を確認】
【感情同期率:上昇】
担任が、初めて明確に表情を歪めた。
「離せ」
瀬那が、晴翔の手首を掴む。
「走るぞ」
次の瞬間。
クラスメイト達が、一斉に階段を上がってきた。
コメント
1件
うわああ第22話…!😭💦 瀬那が「半分消えてる」って笑ったとこで一気に胸ぎゅっとなった…。晴翔の「ふざけんな」「お前だけが普通だった」って叫び、あれ本心だよね。システムに個人が飲まれてく不気味さと、それでも繋がろうとする2人の熱さが混ざってやばい…ラストの「走るぞ」からの全員階段上がってくるカット、映像で観たいくらいだよ!続きが気になりすぎて読み返しそう〜🔥📱