テラーノベル
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教室の空気がざらついていた。
誰も何も言っていないのに、視線の温度だけが妙に高い。遥は席に座ったまま、背後でスマホのシャッター音が“意図的に隠されず”に鳴るのを聞いた。
「──ねぇ、昨日の“あれ”加工したらさ、もっと“らしく”なったよ」
美桜が机に肘をついて、わざと遥のほうを見ながら仲間に話す。
「見せて見せて。
……あー、これエグい。完全に従わせてる側じゃん、うちらが」
「でも本人からしたら屈辱でしょ?
奴隷ってこういう顔するんだね」
笑いながら、スマホの画面を拡大したり縮小したり。
そこに映っているのは昨日の“公開処刑”の写真だ。
本当はただ立っているだけの遥だが、
首元の影を濃くしたり、表情を一部切り抜いたり、角度を歪ませたりして、
まるで“誰かに手をかけられている最中”のように見せてある。
残酷なほど巧妙なフェイク。
美桜がわざと大きめの声で言う。
「これさ、男でも引くレベルじゃない?
ねぇ、あんたこういうの好きなんでしょ?」
遥は静かに息を吸う。
返す言葉が喉まで来ては、形を持たないまま沈んでいく。
「……勝手に、決めんなよ」
静かな声。
しかしその一言だけで、女子たちは一斉にニヤついた。
「ほら、反応した〜。
やっぱり“図星”じゃん?」
「てか、この写真さ、男子に送ったら絶対バズるよ。
“こいつ、外じゃ女に首掴まれてんのかよ”って」
「でもクラスでだけ見せたほうが、
逃げ場なくて可哀想じゃない?」
スマホ画面が光るたび、遥の喉奥がざわつく。
声を荒げられないのを完全に理解されている。
「ねぇ遥、どの写真がいちばん“効く”?
ほら、選べよ。
……奴隷なんだから」
机にスマホが並べられる。
歪んだ影、意味深な距離感、加工で作られた性的ニュアンス。
遥は見ないように顔を上げた。
その目は濁っても折れてもいない。
ただ、深く底に沈んでいるだけ。
女子たちはその沈黙すら笑い声の燃料にした。
「──じゃあ、勝手に選んどくね。
あんたの“評価”なんて、最初からうちらが決めるんだから」
写真の光が、じわりとクラスの中心へと広がっていった。
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