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放課後。
少し強めのノック。
「失礼します」
「どうぞ」
生徒は座ると、すぐに本題に入った。
「いじられるんです」
「うん」
「クラスで、ちょっとしたことでツッコまれたり、からかわれたり」
腕を組む。
「最初は普通に笑ってたんですけど」
少し間を置く。
「なんか、自分だけ“冗談枠”みたいになってて」
日下部は視線を外さない。
「他の人が同じことしても、そんなにいじられないのに」
「自分だけ強めに来る?」
「はい」
短く答える。
「で、こっちがちょっと嫌な顔すると、“冗談じゃん”って言われて終わる」
少し笑うが、目は笑っていない。
「これ、嫌がっていいやつなのか分からなくて」
日下部は頷く。
「嫌なら嫌でいい」
即答する。
生徒は少し驚く。
「いいんですか」
「いい」
短く言う。
「冗談かどうかは、受け取る側で決まる」
生徒は黙る。
「でも」
「うん」
「空気悪くなりません?」
「なる可能性はある」
あっさり言う。
生徒は苦笑する。
「やっぱり」
「ただ」
日下部は続ける。
「今のままだと、“いじっていい人”として固定される」
生徒の表情が少し固くなる。
「固定」
「反応が取りやすいから」
短く言う。
「笑う、困る、焦る。全部リアクションになる」
生徒は目を落とす。
「だから来る」
「そう」
日下部は言う。
「で、対処は三つ」
「三つ」
「一つ目、反応を変える」
生徒は顔を上げる。
「変える?」
「同じように返すか、軽く流す」
短く言う。
「困った顔を見せない」
生徒は少し考える。
「それできたら苦労しないです」
「だろうな」
日下部は続ける。
10
「二つ目、線を引く」
「線」
「“それはやめて”って短く言う」
生徒は少し戸惑う。
「言っていいんですか」
「言わないと伝わらない」
はっきり言う。
「冗談の範囲は、人によって違う」
生徒は黙る。
「三つ目」
日下部は続ける。
「場を選ぶ」
「場?」
「毎回全部に対応しようとしない」
短く言う。
「強く出るときと、流すときを分ける」
生徒はゆっくり頷く。
「ずっと同じだと、どっちかに固定される。いじられっぱなしか、空気壊す人か」
生徒は苦笑する。
「それ、極端ですね」
「実際そうなる」
日下部は言う。
「だからバランス」
少しだけ間を置く。
「一回でも“ここまで”って出すと、相手は調整する」
生徒は考える。
「やってみます」
立ち上がる。
ドアの前で振り返る。
「冗談って、受け入れなきゃいけないものだと思ってました」
「違う」
短く答える。
ドアが閉まる。
笑われることと、笑わせることは、同じじゃない。