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蓮司の相談室3

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蓮司の相談室3

18 - 第18話 空気読める側だけ疲れる

2026年02月24日

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ドアが閉まると同時に、相談者は言った。


「空気読める側だけ損じゃない?」


蓮司は机に肘をつく。


「読めない側は楽だと思うか?」

「少なくとも疲れてなさそう。変な発言しても笑ってもらえるし、場が凍っても本人は気づいてない。結局、俺がフォロー入れて終わる」

「毎回か」

「毎回。誰かが空気壊す→俺が修正。誰かが言いすぎる→俺が薄める。沈黙→俺が話題出す。で、帰り道にどっと来る」


蓮司は少し考える。


「それ、才能」

「いらない」

「だろうな」


相談者は笑わない。


「気づけるのに、気づかないふりできないのが一番きつい。気づいた瞬間、もう俺の仕事になる」

「仕事にしてるのは自分だ」

「分かってる。でも放置すると荒れる」

「荒れてもいい日を作れ」

「無理」

「無理じゃない。荒れた空気は死なない。お前が毎回回収するから、全員のスキルが育たない」


相談者は黙る。


「お前がいると安定する。でもそれは、他が成長しない構造でもある」

「俺が甘やかしてる?」

「少しな」


沈黙。


「でもさ、空気悪いまま終わるの、耐えられない」

「それはお前の問題だ」

「きついな」

「事実。空気は共同責任。お前一人で背負うものじゃない」


相談者は机を見る。


「じゃあどうすれば」

「修正を半分にしろ。全部直すな。2個気づいたら1個だけ触る。もう1個は放置」

「見えてるのに放置?」

「そう。気づける=やらなきゃいけない、じゃない」


少し間。


「俺がやらなかったら?」

「そのとき初めて、全員が“あ、やばい”って学習する」

「今までは?」

「お前が裏で全部処理してたから、やばさが共有されてない」


相談者は息を吐く。


「俺さ、空気読めるの誇りだった」

「今も誇れ」

「でも疲れる」

「読めるのは武器。常時ONにするな」

「切れるの?」

「切れない。でも出力下げられる」

「どうやって」

「即反応しない。3秒待つ。誰かが動く可能性に賭ける。それで動かなかったら、そこで初めて触る」


相談者は小さく笑う。


「3秒ルールか」

「万能じゃないけど効く」


立ち上がる。


「俺がいなくても回るかな」

「少し荒れて、少し学んで、だんだん回る」

「俺の役目減る?」

「減らせ」


ドアの前で止まる。


「空気読める側ってさ」

「何だ」

「優しいんじゃなくて、怖いだけかも」

「何が」

「嫌われるのが」


蓮司は肩をすくめる。


「両方だな」


ドアが閉まる。


空気が読めるのは強さだ。

でも、

全部背負う必要はない。

読めることと、背負うことは別だ。

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