テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#恋愛
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
昼休み。
教室の隅は、やけに明るかった。
笑い声が響いているのに、そこだけ少し距離がある。
生徒は壁に寄りかかって、ぼそっと言った。
「どうせ、って思うんです」
遥は見ない。
「何が」
短く。
「嫌われるって」
間。
「最初は普通に話せるんですけど」
視線は床。
「ちょっと間が空いたり、返信遅れたり、それだけで」
一拍。
「終わったなって思う」
遥は黙っている。
「で、勝手に距離取って」
小さく笑う。
「本当に終わらせる」
沈黙。
「……バカだなって思います」
静かに言う。
遥は少しだけ顔を向ける。
「合理的だな」
短く。
生徒は眉をひそめる。
「え?」
「先に離れれば」
一拍。
「切られる側にならない」
教室の空気が少し変わる。
生徒は言葉を止める。
「……それ」
小さく。
「そうかもしれないです」
遥は続ける。
「予測して先に動く」
机に指を置く。
「それ自体は間違ってない」
一拍。
「ただ」
少しだけ間を置く。
「精度が低い」
生徒は苦笑する。
「当たってないってことですか」
「ほとんどな」
短く。
沈黙。
笑い声が遠くで弾ける。
「……でも」
生徒は言う。
「実際に嫌われることもあるじゃないですか」
遥は頷かない。
「ある」
一拍。
「でもそれはお前が決める前に起きてる」
生徒は止まる。
「……あ」
遥は続ける。
「“嫌われるかもしれない”と“もう嫌われてる”を」
一拍。
「混ぜるな」
教室が静かになる。
生徒は何も言えない。
「可能性と確定は違う」
短く。
「なのに」
一拍。
「確定として動いてる」
生徒は壁から背中を離す。
「……だから早いんだ」
ぽつり。
遥は何も言わない。
「さっきのと同じで」
一拍。
「判断が速すぎる」
自分で言う。
沈黙。
「じゃあ」
生徒は少しだけ顔を上げる。
「どうすればいいですか」
遥はすぐに答えない。
少しだけ考える。
「確認しろ」
短く。
生徒は眉を寄せる。
「確認?」
「事実を増やせ」
一拍。
「一回の反応で決めるな」
机を軽く叩く。
「三回見る」
教室の空気がわずかに動く。
「三回……」
「遅い、そっけない、目を逸らす」
一拍。
「それが三回続いてから考えろ」
生徒は少し考える。
「……一回で決めてました」
小さく笑う。
遥は言う。
「一回はノイズだ」
短く。
沈黙。
窓の外で風が揺れる。
「……怖いのは」
生徒が言う。
「待ってる間なんですよね」
遥は少しだけ視線を向ける。
「分からない時間」
一拍。
「そこが一番きつい」
教室が静まる。
遥は答える。
「そこを飛ばすために」
一拍。
「“どうせ”を使ってる」
生徒は黙る。
「便利な言葉だ」
短く。
「でも」
少しだけ間を置く。
「精度は低い」
生徒は息を吐く。
「……やめたいです」
小さく。
遥は言う。
「やめなくていい」
生徒は顔を上げる。
「え?」
「“どうせ”と思ったら」
一拍。
「ラベル貼れ」
机を軽く叩く。
「これは予測だ、って」
沈黙。
「事実じゃないって分ける」
生徒はゆっくり頷く。
「……それなら」
小さく。
「できそうです」
立ち上がる。
少しだけ姿勢が変わる。
「三回、見ます」
遥は答える。
「それでいい」
短く。
笑い声の中に戻っていく背中は、さっきより少しだけ急いでいなかった。
“どうせ”は未来じゃない。
ただの、早すぎる結論だ。