テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

放課後、生徒の笑い声が遠くなる廊下を、俺は押し流されるようにしてトイレに連れて行かれた。扉が重く閉まる音。鍵はかかっていない。囲む数人の顔が影のように迫る。


「ここなら誰も見てないな」


一人が言い、ニヤリと笑う。


「さっきの爪も背中も髪も、まだ痛むんだろ?」


「……や、やめ……っ……」


俺は机の上とは違う、薄暗く狭い空間に押し込まれ、息を詰める。


「小さくても声出すなよ」


手で口を押さえられた。痛みと羞恥が一度に襲う。


「ほら、モップ持ってこい」


誰かが指示すると、もう一人が水に濡らしたモップを取り出す。


「今度は身体全部だ」


モップで肩や背中を擦り付けられ、湿った冷たさと痛みが肌に走る。


「……や、やめ……っっ、もう……」


小さな声が、喉の奥からこぼれる。懇願ではなく、ただ痛みから逃げたいだけの声だ。


「シャンプーってことで、頭も洗おうか」


冷たい液体が髪にかけられる。燃えた匂いと混ざり、頭皮が痛い。


「顔もこっちに向けろ」


無理やり顔を便器の縁に近づけられる。息が詰まり、心臓が早鐘のように打つ。


「ほら、舐めろ」


一人が冗談のように言い、指示に従わなければもっと痛い目に遭うのだと暗示される。


「……や、いや……無理……」


弱音が自然に口から漏れる。体は震え、目から涙がこぼれる。


「泣いてるのか? でも見せ方が足りないな」


髪を掴み、少し引っ張る。焦げた匂いと痛みが再び鼻を突く。


「……もう……耐えられない……本当に……いや……」


声は懇願に近いが、完全に屈服してはいない。痛みと羞恥に押され、ただ本音が零れるだけだ。


「動いたら、もっと酷いことになるぞ」


「わかってる……でも……もう……いや……」


身体を押さえつけられ、モップで再び背中を擦られる。

水と冷たさがやけど跡に染み、痛みが鋭くなる。


「うわ、髪もべちゃべちゃだし、もうぐちゃぐちゃじゃん」


「はい、便器に頭押し付けー」


叫ぶこともできず、口元が便器に触れそうになる。羞恥と痛みで意識がぐらつく。


……もう……死にたい……でも……怖い……。


言葉が自然に出る。泣きそうな声、嗚咽まじり、懇願までは届かないが、弱音のバリエーションは多い。


囲む人数の笑い声、指先やモップの冷たさ、焦げた髪の匂い、便器の圧迫感――すべてが閉鎖空間で密度を増し、逃げ場はゼロだ。

俺は縮こまり、ただ耐えるしかない。


無名の灯 番外編2

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚