テラーノベル
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停電は、数秒で戻った。
パッ、と廊下の照明がつく。
生徒達のざわめき。
「びっくりしたー」
「なんだったの今」
「通知やばくない?」
みんな、すぐ“日常”へ戻っていく。
でも晴翔だけは違った。
耳の奥に、まだ瀬那の声が残っている。
『屋上』
『逃げろ』
晴翔は、落としかけたスマホを強く握る。
画面。
おすすめ欄は、また普通の動画に戻っていた。
【友達と距離を置くべきサイン】
【クラスで浮かない会話術】
何も知らないみたいな顔。
でも。
さっき確かに。
瀬那が映った。
晴翔は走り出す。
廊下。
階段。
息が乱れる。
途中、何人かの生徒とすれ違う。
その度に。
全員、少しだけ避ける。
自然に。
反射みたいに。
“関わるな”。
もう、空気じゃない。
行動になっている。
「友崎」
階段途中。
声。
担任だった。
晴翔の足が止まる。
担任は、どこか不自然なくらい落ち着いた顔で立っていた。
「授業中だぞ」
「……保健室」
咄嗟に嘘をつく。
担任は、数秒黙って晴翔を見る。
その視線。
妙に冷たい。
「最近、不安定らしいな」
晴翔の背筋が冷える。
“らしい”。
誰が言った。
何を共有している。
担任は続ける。
「無理に学校へ適応しなくてもいい」
その言葉。
優しいはずなのに。
違う。
“排除前の確認”。
そんな感じがした。
晴翔は、何も答えず横を通り過ぎる。
階段を上がる。
屋上へ。
立入禁止の札。
鎖。
でも、鍵は開いていた。
ギィ……。
扉を押す。
夕方前の風。
曇った空。
フェンス。
屋上には、誰もいなかった。
「瀬那!」
思わず声を上げる。
返事はない。
風だけ。
晴翔は息を切らしながら周囲を見る。
その時。
フェンス近く。
床に何か落ちている。
スマホ。
見覚えのある黒いケース。
晴翔は、ゆっくり近づく。
瀬那のスマホだった。
画面は割れている。
でも、まだ電源はついていた。
ロック画面。
時刻。
【12:40】
止まっている。
晴翔は、震える指で画面を触る。
ロック解除。
なぜか、普通に開けた。
ホーム画面。
アプリはほとんど消えている。
残っているのは、動画アプリだけ。
その瞬間。
勝手に起動する。
ノイズ。
暗転。
そして。
動画。
映っているのは、教室だった。
でも、見たことのない映像。
クラス全員がいる。
笑っている。
普通の昼休み。
その中に、瀬那もいる。
ちゃんと。
存在している。
晴翔の目が見開く。
画面の中の瀬那は、教室後ろの席に座っていた。
そして。
ゆっくりこちらを見る。
“カメラ越し”に。
『見つけた』
晴翔の呼吸が止まる。
その瞬間。
映像が切り替わる。
教室。
放課後。
今度は、瀬那しかいない。
机にスマホを置き、誰かに向かって話している。
『最初はおすすめだった』
ノイズ。
『でも途中から、“選別”になった』
晴翔は画面に釘付けになる。
瀬那の顔は、今まで見たことないくらい疲れていた。
『浮くやつ』
『馴染めないやつ』
『空気を乱すやつ』
『そういうのを、少しずつ切ってく』
ノイズ。
画面が乱れる。
『最初は小さい』
『おすすめが変わるだけ』
『でも、みんな見る』
『同じものを』
晴翔の喉が乾く。
瀬那は続ける。
『だから、“普通”が固定される』
『そこから外れたやつは』
一瞬。
映像が止まる。
瀬那が、真っ直ぐカメラを見る。
『消される』
ブツッ。
動画終了。
晴翔は動けない。
風が強くなる。
フェンスが軋む。
その時。
背後。
屋上扉の方。
ギィ……。
誰かが入ってくる音。
晴翔が振り向く。
そこには。
クラスメイト達が立っていた。
美玲も。
担任も。
全員、スマホを見ている。
そして。
同時に。
ゆっくり晴翔を見る。
まるで。
“修正対象”を確認するみたいに。
コメント
1件
わあ……第18話、めっちゃ怖かったし、美しかったです……。 晴翔が走って屋上に向かうところ、担任の先生の“優しい排除”の言い回しがリアルすぎて、心臓ぎゅってなりました。特に「無理に適応しなくていい」って台詞、一見優しいのに“もうお前はいらない”って聞こえる感じ、ゾッとした……。 動画で瀬那が『普通が固定される』『外れたやつは消される』って言うところ、この物語の根幹をすごくシンプルに言語化してて、読みながら体が冷えました。最後にクラスメイト全員が晴翔を見つめる構図、映画のワンシーンみたいで圧巻でした……。 次の話、もう今すぐ読みたいです🤍🕯️
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