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きつねもち
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#オリジナル
重田💋(omoda)
183
#異世界転生
しめさば
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#ファンタジー
柘榴とAI

49
神殿の奥は、まだ焦げた匂いが残っていた。
祝福の水晶があったはずの場所は空だ。
砕けた破片も、もう片付けられている。
ただ、台座だけが残っている。
白い石の台。
そこに、一人の神官が立っていた。
老いた男だ。
名前は誰も覚えていない。
儀式を何十年も見てきた神官。
彼はゆっくりと台座に手を置く。
「……静かだな」
誰に言うでもなく呟く。
昔は違った。
ここには光があった。
祝福の輝き。
選ばれる歓声。
祈り。
神の声が聞こえると言う者もいた。
神官はそれを一度も聞いたことがない。
だが。
光は確かにあった。
選ばれた者たちの未来を照らす光。
それが今はない。
神殿は沈黙している。
若い神官が奥から出てくる。
「師よ」
「なんだ」
「……本当に、神は消えたのでしょうか」
老神官は笑った。
「お前はどう思う」
若い神官は答えない。
ただ、空の台座を見る。
「祝福は消えました」
「そうだな」
「儀式も終わりました」
「そうだ」
「神殿の力も弱まっています」
老神官はゆっくり頷く。
「それで?」
若い神官は言葉を選ぶ。
「それでも」
少し間。
「“何か”は残っている気がします」
老神官は目を細めた。
「何が」
若い神官は台座を見る。
「……仕組みです」
その言葉に、老神官は静かに笑う。
「いいところに気づいた」
杖で床を軽く叩く。
石の音が響く。
「神は」
老神官は言う。
「最初から、いなかったのかもしれない」
若い神官が顔を上げる。
「え」
「祝福は装置だった」
「……」
「世界を回すための仕組み」
老神官は台座を撫でる。
「神が作ったのか。
それとも誰かが“神と呼んだ”のか。
わからない」
神殿の天井は高い。
昔はそこに光が満ちていた。
今はただの空間だ。
若い神官が言う。
「では……終わったのでしょうか」
老神官は首を振る。
「終わり?」
小さく笑う。
「むしろ始まりだ」
若い神官は困惑する。
老神官はゆっくり言う。
「装置は壊れた」
「はい」
「だが」
杖が台座を軽く叩く。
「世界はまだ動いている」
沈黙。
風が神殿の窓を通る。
若い神官が小さく言う。
「……つまり」
老神官は頷く。
「装置は一つではなかった」
その言葉が落ちた瞬間。
神殿の奥で、微かな音がした。
カチ。
小さな音。
機械のような。
二人は同時に振り向く。
暗い回廊の奥。
誰もいない。
音ももうない。
若い神官が言う。
「今のは」
老神官はしばらく黙る。
それから、ゆっくり笑った。
「さあな」
杖をつく。
出口に向かって歩き出す。
「だが一つだけ言える」
振り返らずに言う。
「神は消えたかもしれない」
足音が響く。
「だが」
神殿の奥、暗闇。
誰もいないはずの場所で。
また、微かな音。
カチ。
老神官は歩きながら続ける。
「神の“仕事”は、まだ終わっていないらしい」
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