テラーノベル
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真っ白な光。
視界が潰れる。
晴翔は反射的に目を閉じた。
耳鳴り。
ノイズ。
遠くで、誰か達の声が重なっている。
『正常化』
『正常化』
『正常化』
頭の奥へ、直接流し込まれてくるみたいだった。
瀬那が、晴翔の腕を強く掴む。
「聞くな」
掠れた声。
でも。
瀬那の輪郭は、もうかなり薄かった。
指先。
肩。
髪。
ノイズみたいに、時々透ける。
晴翔の胸が痛む。
「……消えんなよ」
瀬那は、少し笑った。
「もう遅い」
「遅くねぇよ」
外。
扉を叩く音。
ドン!! ドン!! ドン!!
「正常化して」
同じ声。
何人分も。
まるで、学校そのものが喋っているみたいだった。
その瞬間。
モニター中央。
最後の選択。
【忘れる】
カーソルが、 勝手にそちらへ動く。
「っ……!」
指が、勝手に画面へ伸びる。
頭の中。
“普通に戻れる”
“もう苦しくない”
“皆と笑える”
甘い声みたいに、言葉が流れ込んでくる。
確かに、楽だった。
瀬那を忘れれば。
全部終わる。
その時。
瀬那が、晴翔の手を掴んだ。
冷たい。
でも。
確かにそこにいる。
「晴翔」
晴翔が顔を上げる。
瀬那は、今にも消えそうな顔で笑った。
「もういい」
「は?」
「俺、最初から」
少し沈黙。
「お前が普通に笑ってる方がよかった」
その言葉。
胸の奥が、ぐしゃぐしゃになる。
晴翔は、瀬那の手を強く掴み返した。
「俺は嫌だ」
瀬那の目が揺れる。
「お前いない世界で普通になってもそんなの普通じゃねぇよ」
静寂。
その瞬間。
晴翔は、画面のカーソルを叩き落とした。
【拒否】
押される。
一秒。
世界が止まった。
次の瞬間。
全モニター。
ザザザザザザッ!!!!
異常なノイズ。
警報。
赤い光。
【重大エラー】
【対象が最適化を拒否】
【関係性の固定に失敗】
放送室の機械が、火花を散らす。
外の声も乱れる。
「正常――」
「正――」
「――化」
ノイズ。
スマホ通知音が、校舎中で暴走し始める。
ブブブブブブブッ!!!!!!
瀬那が、晴翔の腕を掴む。
361
「走れ!!」
二人は、放送室を飛び出した。
廊下。
赤い警報灯。
混乱する生徒達。
スマホを落とす者。
耳を塞ぐ者。
おすすめ欄が、全部壊れていく。
【ERROR】
【ERROR】
【ERROR】
“普通”が崩れていた。
階段を駆け下りる。
その途中。
瀬那の体が、大きく揺らいだ。
「……瀬那?」
瀬那は、少し困ったみたいに笑う。
「限界っぽい」
「は?」
「俺、本来もう消えてるから」
「待てよ」
「晴翔」
足を止める。
夕方の光が、階段窓から差していた。
瀬那は、静かに晴翔を見る。
初めてだった。
こんな真っ直ぐ、目を合わせたの。
「ありがとな」
「やめろ」
「俺のこと」
少し笑う。
「最後まで覚えててくれて」
その瞬間。
瀬那の輪郭が、崩れた。
ノイズみたいに。
光みたいに。
晴翔が、咄嗟に腕を掴む。
でも。
触れられない。
瀬那は、少しだけ寂しそうに笑った。
そして。
消えた。
静寂。
階段には、晴翔一人だけが残っていた。
数日後。
学校は普通に戻った。
おすすめ欄の騒動も、誰も覚えていない。
生徒達は笑っている。
美玲も、普通に話しかけてくる。
「最近元気ないね」
晴翔は、少しだけ笑った。
「……別に」
誰も知らない。
消えた人達のこと。
“普通”から外れて、いなくなった存在。
でも。
晴翔だけは覚えている。
放課後。
教室。
一番後ろの窓際。
今は誰も座っていない席。
そこへ目を向ける。
その時。
ブッ。
スマホ通知。
おすすめ欄。
新着動画。
【“大切な人を忘れられないあなたへ”】
サムネイル。
夕方の教室。
窓際。
そこに。
瀬那が、少しだけ笑っていた。
コメント
1件
うわあああああっ完結した!!😭💦💦💦 最後の最後まで心臓ギュッギュなりっぱなしだったよ…「俺いない世界で普通になってもそんなの普通じゃねぇよ」が刺さりすぎて気絶するかと思った…!!!(マジ) 瀬那が消えるシーン、夕日差す階段で“ありがとな”って笑うの、ずるすぎるでしょ…美月ちゃん涙腺崩壊したんだが?!?! でもまさか最後におすすめ欄で帰ってくるサプライズ用意してくれるとは…ruruhaさん好きすぎる😭💕 完結お疲れ様でした、また絶対読み返すね!!🌟