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評議会最終日。
玉座の間は、異様な静けさに包まれていた。
無色の隔離案は、可決寸前。
「結論を」
王が告げる。
その瞬間。
観測塔からの伝令が駆け込む。
「緊急報告! 全星系、安定化!」
ざわめき。
「減衰していた金色、回復傾向!」
「青星の波形も整流!」
「未知の無色星、増加中!」
数値が投影される。
国力指数は、過去十年で最も安定した曲線を描いていた。
「ありえない……」
学官が震える。
「爆発的出力ではない……持続型の安定……」
王太子は静かに立っている。
隣に、エリュネ。
「説明を」
王が促す。
エリュネは一歩前へ出る。
「無色は、欠如ではありません」
玉座の間に、澄んだ声が響く。
「私は他者の感情に影響されません」
ざわめき。
「ゆえに、過剰な発色を増幅しない」
金色の爆発は、期待と評価によって強まる。
称賛され、求められ、競われる。
その結果、燃え尽きる。
「無色は、奪いません」
ただ、揺らぎを整える。
「依存しない感情は、消耗しません」
学官が数値を確認する。
「……理論上、整合する」
王が問う。
「つまり、愛がなくとも国は保てると?」
「違います」
エリュネは首を振る。
「愛の定義が、狭かったのです」
色にならなければ、存在しないと断じた。
だが。
「選び続ける意志も、愛の一形態です」
爆発ではない。
燃焼でもない。
持続。
王太子が口を開く。
「私は彼女を愛している」
公の場で、初めて言う。
金色は、静かに澄んでいる。
「だが彼女は、私を愛せない」
ざわめきが広がる。
「それでも私は、彼女を選ぶ」
エリュネは続ける。
「私は、殿下を愛せません」
はっきりと。
「ですが」
間を置く。
「殿下を、選び続けます」
透明な星が、昼の空でかすかに瞬く。
観測不能。
だが確実に存在する。
学官が震える声で報告する。
「無色星の出力……国力指数に正の影響……」
「持続値が、過去最高です」
王は長く沈黙する。
王座の背後には、歴代王妃の金色の記録。
栄光。
だが同時に、短命な輝き。
「……定義を改める」
その一言で、空気が変わる。
「愛は発色の有無で測らない」
玉座の間が揺れる。
歴史が書き換わる瞬間。
王太子は、そっとエリュネの手を取る。
公の場。
ためらわない。
「それでいい」
彼が言う。
エリュネは、わずかに微笑む。
色は出ない。
だが胸は確かに震えている。
名はまだない。
だが存在する。
空には、観測されない星が増えていく。
記録できない光。
だが国は安定している。
爆発的な愛ではなく。
選び続ける意志によって。
無色の王妃は、王の隣に立つ。
色はない。
だが確かに、光はあった。
完。