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コメント
1件
うわ…ぞわっとした(;;) イヤホン、匂い、声、全部が繋がってるのに、触れられない距離感が切ない。 最後のサムネイル、あれは晴翔が“異常”として認識され始めてるってことだよね…怖いのに、続きが気になって仕方ない。瀬那からの「見つけるな」も、何か裏がありそうで。ruruhaさんの紡ぐ重さ、すごく好きです🧎♀️🤍
イヤホン。
黒。
片側だけ少し擦れていて、ケースに小さい傷がある。
見覚えなんてもんじゃない。
何回も見た。
昼休み、瀬那がいつも机に放っていたやつだ。
晴翔は、ゆっくりその席へ近づいた。
心臓が変に速い。
教室には誰もいない。
夕方の風だけが、カーテンを少し揺らしている。
机の上。
イヤホンは、本当にそこにあった。
触れる。
冷たい。
ちゃんと物体だ。
幻じゃない。
「……いる」
小さく呟く。
その瞬間。
ブッ。
スマホ通知。
晴翔は肩を跳ねさせた。
画面を見る。
動画アプリ。
おすすめ欄。
【“痕跡を発見した観測者へ”】
呼吸が止まる。
次の動画。
【“削除済み人物は、完全消去前に痕跡を残す場合があります”】
晴翔の喉が乾く。
“完全消去”。
つまりまだ、終わっていない。
その時。
廊下から声がした。
笑い声。
部活帰りの生徒達。
現実感のある音。
なのに、この教室だけが別世界みたいだった。
晴翔は、イヤホンを握りしめたまま席に座る。
瀬那の席。
まだ、ほんの少しだけ柔軟剤の匂いがした。
胸の奥が痛む。
変だ。
昨日まで、ただの友達だったはずなのに。
こんな風に、一つの物を大事そうに握るなんて。
晴翔は目を閉じる。
思い出す。
瀬那の声。
“見るな”
“閉じろ”
“間に合ううちに離れろ”
全部、晴翔を守ろうとしていた。
「……何でだよ」
掠れた声。
何で。
そんな顔してた。
何で。
消える前みたいだった。
スマホを握る。
検索欄。
『削除済み人物』
『おすすめ欄 消えた人』
『存在 消える』
検索結果。
【該当する情報は見つかりませんでした】
何回検索しても同じ。
まるで、最初からそんな現象は存在しないみたいに。
晴翔は、もう一度動画アプリを開く。
怖い。
でも、今はこれしか手がかりがない。
おすすめ欄。
更新。
【“削除された相手を探し始めた人へ”】
次。
【“観測を続けると、あなたも修正対象になります”】
背筋が冷える。
“修正対象”。
昨日の、小さな違和感を思い出す。
クラスの空気。
視線。
会話。
“変なやつ”。
少しずつ。
晴翔の方が、現実からズレ始めている。
その時。
ブッ。
別の通知。
メッセージアプリ。
知らないアカウント。
アイコンなし。
361
名前なし。
通知内容。
【まだ覚えてる?】
晴翔の呼吸が止まる。
指が震える。
開く。
トーク画面。
相手名は空白。
でも。
既読の横。
小さく表示されたユーザーID。
『sena_04』
「……っ」
喉が詰まる。
急いで文字を打つ。
【瀬那?】
送信。
既読。
すぐ。
でも返信は来ない。
画面上部。
“入力中……”
表示。
消える。
また表示。
消える。
晴翔の鼓動が速くなる。
やっと。
やっと繋がった。
その瞬間。
教室の照明が、一瞬だけ明滅した。
ブツッ。
スマホ画面が乱れる。
ノイズ。
そして。
トーク画面に、新しいメッセージ。
【見つけるな】
晴翔は固まる。
次の瞬間。
さらにメッセージ。
今度は、明らかに瀬那の打ち方じゃない。
【正常な学習を妨げる接続を検知しました】
晴翔の背筋が凍る。
【関係データを修正します】
その瞬間。
スマホ画面が、勝手に切り替わる。
動画アプリ。
おすすめ欄。
【“消えた相手を追い続けた人の末路”】
動画のサムネイル。
夕方の教室。
窓際。
そこに映っていたのは。
誰もいない席に向かって、一人で話しかけている晴翔自身だった。