テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は少しだけ戸惑った顔で言った。
「みんな笑ってるのに、自分だけ笑えないときある……」
蓮司は椅子を引く。
「どんな場面」
「誰かが何か言って、周りはウケてる。
でも自分はピンと来てない」
「で、どうしてる」
「とりあえず笑う。遅れて」
蓮司は座る。
「合わせてるな」
「浮きたくないし……」
「そのあとどうなる」
「なんかズレる。
笑うタイミングも、強さも違う感じがする」
少し沈黙。
「それ、“理解”と“反応”が分かれてる」
「分かれてる?」
「頭では分かってないのに、体だけ合わせてる」
相談者は黙る。
「じゃあどうすればいい」
「全部理解しようとするな」
「え」
「ノリの笑いは、意味じゃなくて空気で起きてる」
相談者は眉を寄せる。
「じゃあ分からなくてもいい?」
「いい。
“分かってないけど流れで笑う”は普通」
間。
「でもなんか、嘘っぽい」
「全部本音で反応してるやつの方が少ない」
相談者は少し苦笑する。
「そうなのか……」
「問題はそこじゃない」
「何」
「“笑えなかった自分”を引きずってること」
相談者は視線を落とす。
「それはある……」
「一回のズレを、評価に変えてる」
「評価?」
「“自分はノリ悪い”“合ってない”って結論出す」
間。
「違うの?」
「一回じゃ分からない。
単にその話題が合わなかっただけ」
相談者は黙る。
「全員に全部ハマるやつなんていない」
「……確かに」
少し沈黙。
「じゃあ笑えなかったとき、どうする」
「二択」
「またそれか……」
「乗るか、スルーするか」
「中途半端は?」
「ズレる」
相談者は苦笑する。
「やってた」
「乗るなら軽く。
スルーするなら表情だけでいい」
「何も言わない?」
「言わなくていい。
無理に合わせる方が浮くときもある」
間。
「でも周りからどう見えるか気になる」
「全員がお前見てるわけじゃない」
相談者は小さく息を吐く。
「考えすぎか……」
「考えすぎ」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「全部の笑いに入らなきゃって思ってた」
「入らなくていい」
「外れてもいい?」
「いい。
合うところで入ればいい」
相談者は頷く。
ドアの前で立ち止まる。
「全部拾わなくていいか」
「いい」
ドアが閉まる。
笑えない瞬間は、ズレじゃない。
ただ、その話題が自分に来ていないだけだ。
ruruha
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