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名無しのななしさん
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ruruha
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コメント
1件
読み終わりました……すごく、心に静かに刺さりました。 「置いてきたんじゃなくて、まだ連れてるのか」っていう言葉、ずっと胸の中に残ってます。 遥さんの「当時持ってたものでしか戦えない」っていう台詞も、今の自分に痛くて。 苦しかった頃の自分を責めてる時って、本当は一番自分のこと見てなかったんだなって気付かされました。 この教室の空気、夕日の色、静け方、全部が丁寧で、読んでて泣きそうになりました。ruruhaさんの表現、すごく好きです🌙
放課後。
教室には誰もいない。
カーテンだけが少し揺れている。
生徒は窓際の席に座りながら言った。
「変わりたいって思ってたんです」
遥は黙って聞いている。
「ずっと」
一拍。
「今よりマシになりたいとか、強くなりたいとか」
視線が窓の外へ向く。
「だから少しずつ変わってきたと思うんです」
沈黙。
「でも」
小さく息を吐く。
「たまに苦しくなる」
遥は聞く。
「何が」
短く。
生徒は少し考える。
「昔の自分です」
教室が静まる。
「昔?」
「はい」
一拍。
「しんどかった頃の自分とか、どうしようもなかった頃の自分とか」
視線が落ちる。
「思い出すと」
少し言葉が詰まる。
「なんか」
沈黙。
「置いてきた気がする」
遥はすぐには返さない。
しばらく教室の静けさだけが続く。
「助けられなかった感じか」
短く。
生徒は止まる。
「……あ」
その一言だった。
遥は机に指を置く。
「今のお前から見ると」
一拍。
「もっとやれた気がする。
もっと言えた気がする。
もっと逃げられた気がする」
短く。
「そう見える」
沈黙。
生徒は何も言わない。
遥は続ける。
「でも」
一拍。
「当時のお前には無理だった」
教室が静まる。
生徒は視線を伏せる。
「……分かってるんです」
小さく。
「頭では」
遥は言う。
「分かってないな」
短く。
生徒は顔を上げる。
遥は続ける。
「本当に分かってたら」
一拍。
「そこまで責めない」
沈黙。
教室の空気が少し重くなる。
「お前」
遥は言う。
「今の知識で、昔のお前を裁いてる」
短く。
「それ、反則だ」
生徒は黙る。
遥は窓の外を見る。
「人間ってな」
一拍。
「当時持ってたものでしか戦えない」
教室が静まる。
「今のお前は知ってる。逃げ方も、考え方も」
一拍。
「色々なことを」
短く。
「でも昔のお前は知らない」
沈黙。
生徒はゆっくり息を吐く。
「……だから」
小さく。
「許せないのか」
遥は否定しない。
「弱かった自分がな」
短く。
教室が静まる。
「でも」
遥は続ける。
「本当に嫌いなら」
一拍。
「そんな何年も引きずらない」
生徒は止まる。
遥は机を軽く叩く。
「置いてきた気がするのは」
短く。
「置いていきたくなかったからだ」
沈黙。
その言葉だけが残る。
生徒は何も言えない。
遥は続ける。
「お前が見捨てたんじゃない」
一拍。
「まだ気にしてるだけだ」
教室の空気が少し変わる。
生徒は窓を見る。
夕日が少しずつ沈んでいる。
「……なんか」
小さく笑う。
「昔の自分のこと」
一拍。
「邪魔だと思ってました」
遥は何も言わない。
「忘れたいし、思い出したくないし」
一拍。
「でも」
少し考える。
「本当は違うのかも」
遥は短く言う。
「だろうな」
沈黙。
生徒は立ち上がる。
鞄を持つ。
ドアへ向かう。
「置いていったんじゃなくて」
一拍。
「まだ連れてるのか」
独り言みたいに言う。
遥は何も答えない。
昔の自分を思い出して苦しくなるのは、未熟だったからじゃない。
弱かったからでもない。
その頃の自分が、確かに苦しかったことを知っているからだ。
忘れられないのは、大事だったからでもある。