テラーノベル
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廊下の空気が変わる。
ほんの一瞬。
でも、確実に。
美玲が、スマホを見たまま後ずさる。
顔色が悪い。
「どうした」
晴翔が一歩近づく。
その瞬間。
美玲は反射的に離れた。
晴翔の動きが止まる。
美玲自身も、自分の反応に驚いている顔だった。
「……ごめん」
小さい声。
でも視線は、まだスマホに落ちている。
晴翔は、嫌な予感のまま聞く。
「何出てる」
美玲はすぐ答えない。
周囲を見る。
廊下。
スマホを見始める生徒達。
ざわめき。
みんな、同じ顔をしている。
“何かを知った顔”。
美玲が、ゆっくり画面を見せる。
おすすめ欄。
【“関わると正常な学習を妨げる人物一覧”】
その下。
顔写真。
晴翔。
そして。
小さな文字。
【周囲への認識障害を確認】
【関係性データに異常あり】
【接触を控えてください】
晴翔の喉が冷える。
「……は?」
「私、これ……」
声が震えている。
「急に出て……」
その時。
後ろで誰かが言う。
「え、俺も出てる」
別の声。
「同じやつ」
空気がざわつく。
晴翔は周囲を見る。
何人も、同じ画面を見ていた。
しかも。
全員、少しずつこちらを見ている。
視線。
警戒。
戸惑い。
さっきまでと違う。
“変なやつ”じゃない。
“避けるべき対象”。
晴翔の心臓が強く鳴る。
その瞬間。
ブッ。
自分のスマホ通知。
開く。
おすすめ欄。
【“不要な接続として分類された場合”】
次。
【“周囲は徐々にあなたを回避します”】
晴翔の呼吸が浅くなる。
廊下を歩く生徒達。
自然に。
本当に自然に。
晴翔の周囲だけ、空間が空いていく。
避けられている。
誰かが、小さく言った。
「怖……」
晴翔は振り向く。
女子二人組。
目が合った瞬間、すぐ逸らされる。
胸が痛む。
違う。
自分は何もしてない。
なのに。
“危険です”って表示されただけで。
世界が変わる。
美玲が、まだ迷っている顔で立っていた。
「……美玲」
美玲が肩を揺らす。
「俺、おかしくないから」
その言葉。
言った瞬間。
自分でも、少し弱いと思った。
美玲はすぐ答えない。
ただ。
スマホ画面と、晴翔の顔を何度も見比べている。
まるで。
どっちを信じるか、選ばされているみたいに。
その時。
ブッ。
美玲のスマホ通知。
美玲が画面を見る。
顔色が変わる。
「……何」
美玲はゆっくり首を振る。
「いや……」
でも。
隠しきれていない。
晴翔は、半ば無理やり画面を見る。
おすすめ欄。
【“対象に同情し始めた場合の危険性”】
次。
【“共感は認識異常を伝播させます”】
晴翔の背筋が凍る。
感染。
これは。
“人間関係そのもの”を、感染扱いしている。
美玲が、一歩下がる。
小さい動き。
でも。
決定的だった。
晴翔は、その動きを見てしまった。
“避けられた”。
胸の奥が、静かに痛む。
その時。
校舎の窓ガラス。
そこに映った廊下。
生徒達。
美玲。
晴翔。
そして。
晴翔のすぐ後ろ。
黒い制服姿。
瀬那が立っていた。
晴翔が振り向く。
誰もいない。
でも。
耳元。
すぐ近く。
低い声。
「見るな」
瀬那の声だった。
コメント
1件
うわ……第16話、重かったですね。まさか晴翔が「危険人物扱い」されるとは。おすすめ欄に突然現れる“接触回避リスト”という仕掛けが、普通の学校風景にじわじわ浸食してくる感じ、すごく怖かったです。 美玲が一歩下がるあの動き、一瞬なのに決定的で、胸が詰まりました。システムと人間関係の絡み方が巧妙で、ラストの瀬那さんの登場も不気味でゾクッとしました。続きが気になります!
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