テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
男はミズチに訴えた。
御婦人よ、この恐ろしい場所から妻を連れ戻すためどうかご助力願いたい。
妻は心臓がと止まり、死者としてこちらに送り出されたがそれは間違いです。
妻はそう言う奇病を患っており、いつも半刻もしないうちに息を吹き返すのです。
男の話を聞くうちにミズチは己の内に火花が炸裂するのを感じた
男の妻に向けられた情熱や想いを感じ取り、ミズチは激しく揺れ動かされた。
憧れ、惹かれ、嫉妬さえ覚えた。
そして、目の前の男をなんとしても自分のものとしたいという恋慕の情が溢れ、ミズチには止められなくなった。
平静を装い、ミズチは男にこう告げた。
では、どうぞ私の船にお乗りください。奥様のもとまでご案内しましょう、と。
男は喜び勇んでミズチの船に乗り込んできたが、ミズチは隠し持った短剣で男の喉を素早く切り裂いていた。
手にかけたばかりの男の骸を抱きしめ、ミズチは泣き笑う。
男の生命が自分の物になったのと同時、永遠に失われたことを知ったからだ。
ミズチは男の身体を引きずってモルグの咢へと飛び込み、偉大で邪悪、そして慈悲深い牙に粉微塵にかみ砕かれ――、二人は一つとなった。