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きつねもち
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#異世界転生
しめさば
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#ファンタジー
柘榴とAI

49
庭で剣を振る音がする。
振り返らなくてもわかる。
レオンだ。
またやっている。
「アルト」
声が飛んでくる。
「もう一回やろ」
息が上がっている。
額に汗。
服は土だらけ。
さっきまで父の稽古を見ていたはずなのに、もう剣を振っている。
「……まだやるの?」
「うん」
当然みたいに言う。
アルトは少し笑う。
「さっき三十回くらいやったよ」
「数えてない」
「数えなくてもわかる」
レオンは剣を構える。
構えだけは真面目だ。
アルトは少しだけ迷う。
父はもう家の中だ。
本当は休んでもいい。
でも。
レオンは待っている。
断る理由もない。
アルトも剣を構える。
「いいよ」
レオンの顔が明るくなる。
それが、少し不思議だった。
普通は逆だ。
兄に勝てない弟は、だんだん嫌がる。
機嫌が悪くなる。
やらなくなる。
でもレオンは違う。
何回負けても来る。
「行くよ」
剣が振られる。
アルトは受ける。
軽い。
弾く。
また落ちる。
レオンは拾う。
また来る。
また落ちる。
何度も繰り返す。
アルトはふと聞く。
「なんでそんなにやるの?」
レオンは少し考える。
それから言う。
「一緒だから」
「何が」
「アルトと」
剣を握り直す。
「同じだから」
アルトは黙る。
同じ。
そう言われると、少し変な感じがした。
アルトはずっと言われてきた。
才能がある。
剣の家に生まれた子だ。
将来が楽しみだ。
父も、そういう目で見る。
でもレオンは違う。
剣を振るとすぐ腕が痛くなる。
構えも少し遅い。
体も軽い。
なのに。
「同じ」
と言う。
アルトはレオンを見る。
汗だらけで、息を切らして、でもまだ立っている。
「……変なやつ」
アルトは小さく言う。
レオンは笑う。
「よく言われる」
また剣を構える。
夕日が庭を赤くする。
アルトはふと思う。
祝福の儀式。
16歳。
神殿。
いつかその日が来る。
アルトはきっと剣の祝福をもらう。
そう言われている。
多分、本当だ。
でも。
そのとき。
レオンは隣に立つんだろうな、と自然に思う。
同じ日。
同じ壇上。
祝福を受ける場所。
レオンは隣で笑っている気がする。
アルトは剣を構える。
「来い」
レオンが走る。
また負ける。
でも。
レオンは笑う。
アルトは思う。
――まあいいか。
隣にいるなら。
それでいい。
そのときのアルトは、まだ知らない。
祝福の壇上で。
並ぶはずだった場所が、
一つだけになることを。
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