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日下部の相談室3

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日下部の相談室3

36 - 第36話 なんであの人ばっかり好かれるのか分からない

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2026年03月22日

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放課後。

ドアが開く。


「……いいですか」

「どうぞ」


生徒は入ってきて、椅子に座る。少しだけ迷ってから口を開く。


「クラスに、めっちゃ好かれてる人がいるんです」

「うん」

「別に悪い人じゃないし、普通にいいやつなんですけど」


少し言葉を選ぶ。


「なんであの人ばっかり、って思っちゃって」


日下部はそのまま聞く。


「自分も普通にやってるつもりなんです。話もするし、空気も読んでるし」


机を見ながら続ける。


「でも、あの人の方に人が集まる」

短く息を吐く。

「なんか、納得できないというか」

少し小さくなる声。

「ちょっとだけ、イラっとするというか」


日下部は頷く。


「普通の反応だ」


生徒が顔を上げる。


「そうなんですか」

「うん。比べてるから」


短く言う。


「比べてる」

「同じ場所にいると、どうしても基準になる」


生徒は黙る。


「で、なんで好かれてるか分からないと、余計に引っかかる」

「はい」


日下部は少し考える。


「理由はだいたい三つ」

「三つ」

「一つは、分かりやすい」


生徒は首を傾げる。


「分かりやすい?」

「リアクションが大きいとか、よく笑うとか、話しかけやすいとか。周りが入りやすい形をしてる」


生徒は少し頷く。


「それは……あるかもしれないです」

「二つ目は、否定しない」

「否定」

「人の話を止めない。ツッコみすぎない。だから一緒にいて楽」


生徒は考える。


「それもある気がします」

「三つ目は、空気を軽くする」


日下部は続ける。


「場が重くなりそうなときに、自然に戻せる人は好かれやすい」


生徒は少し黙る。


「全部、自分にない気がします」

「なくてもいい」


日下部はすぐに言う。


「好かれ方が違うだけだから」


生徒は顔を上げる。


「違う?」

「目立つ好かれ方と、静かな好かれ方がある」


短く言う。


「全員が同じタイプになる必要はない」


生徒は考える。


「でも、やっぱりちょっと悔しいです」

「そうだろうな」


日下部は頷く。


「じゃあどうするか」

「どうするんですか」

「真似するか、気にしないか」


生徒は少し笑う。


「シンプルですね」

「シンプルでいい」


日下部は続ける。


「少しだけ取り入れるのはあり。リアクションを大きくするとか、話を最後まで聞くとか」

「全部変えなくても?」

「全部やると不自然になる」


短く言う。


「一個だけでいい」


生徒はゆっくり頷く。


「もう一つは?」

「比べるのをやめる」


生徒は苦笑する。


「それできたら苦労しないです」

「だろうな」


日下部は少しだけ肩をすくめる。


「でも、比べるとずっと負けた感じが残る」

静かに言う。

「相手の土俵で見てるから」


生徒は黙る。


「だから」

続ける。

「自分のやり方で関係を作る」


生徒は少し考える。


「……分かるような、分からないような」

「今はそれでいい」


日下部は言う。


「少なくとも、“なんであいつだけ”って考え続けるよりは楽になる」


生徒は立ち上がる。


「ちょっとスッキリしました」


ドアの前で振り返る。


「好かれてる人って、やっぱり理由あるんですね」

「だいたいある」

一拍おかずに答える。

「でも、それが正解とは限らない」


ドアが閉まる。


人が集まる理由はある。

でも、それに合わせるかどうかは別の話だ。

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