授業が終わるチャイムが鳴り、周囲の生徒がぞろぞろと教室を出ていく。だが、俺だけは動けなかった。
背中のやけど、腕の痛み、爪の痺れ。全部が俺を重く縛り付ける。
「おい、まだいたのか」
声が後ろから響いた。振り返ると、あの前列の二人組がにやりと笑って立っていた。
「さっきの本音タイム、面白かったな」
「ねえ、続きを聞かせてくれよ」
俺は首をすくめ、机の上に顔を伏せる。
「……もう、やめて……」
小さく漏れる声が、さらに笑いを誘うだけだった。
一人が机の上に手を置き、軽く押す。
「ほら、起きろ。こっち向け」
無理やり顔を上げさせられると、やけどの跡に触れるように指が這った。
「うわ、やけどしてんじゃん。痛そう」
「それに髪も……燃えたまんまじゃん」
笑いながら髪を軽くつかみ、こちょこちょと引っ張る。
「いたっ……や、やめ……」
本音がついに声になって出る。懇願ではなく、ただの痛みの声だ。
「おー、泣きそうな顔してる」
「もっと聞かせてよ、何言いたいの?」
「生きてるのが辛いとか?」
俺の胸がぎゅっと締め付けられる。
思わず口をついて出る言葉。
「……助けて……誰か……」
「誰も助けないよ」
片方が笑い、もう一人は机の端を叩いてからかう。
「じゃあ、どうする? 死にたいけど怖いんだろ?」
言葉が的確すぎて、余計に心臓が痛い。
「……そう……だ……」
顔が熱くなり、涙がこぼれそうになる。
「……なんで、俺……こんな……」
「お、泣くの? 録画しとこっか」
「やめ……や、やめろ……」
声は小さく、懇願に近いけど、完全な屈服ではない。
痛みと羞恥で震えながら、ただ立っているしかなかった。
「ほら、机に手つけよ。ちゃんと屈んで」
「うわ、爪見えちゃってるじゃん。痛そう」
一人が爪を指で撫でてくる。痺れがさらに増す。
「……や、やめ……本当に……」
口から出る言葉は断片的で、どれも弱音そのもの。
だが、聞いてる側には笑いの材料でしかなかった。
時間がゆっくりと過ぎ、教室の中は密室のように締め付けられる。
逃げ場も、助けも、ない。
ただ、笑い声の中で、俺は縮こまるしかなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!