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#読み切り
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ドアが開く。
相談者はスマホを握ったまま言った。
「既読ついたあと、何も来ないの、めっちゃ怖い」
蓮司は椅子を引く。
「どのくらい待つ」
「長いと半日。短くても数時間。さっきまで普通に話してたのに、急に止まる」
「内容は?」
「重くない。てか、むしろ軽い。スタンプとか、ちょっとした雑談。でも俺が送ったあとで止まると、“あ、ミスったかも”ってなる」
蓮司は机にスマホを置いた。
「それ、会話が終わっただけの可能性が一番高い」
「でも既読ついてる」
「読む=返す、じゃない。読む=内容確認。そこで区切る人も多い」
相談者は顔をしかめる。
「でも、他のやつには返してるかもしれないじゃん」
「そりゃ返してることもある。優先順位はあるからな」
「じゃあ俺、低い?」
「“その話題の優先度が低い”だけ。お前の価値じゃない」
少し沈黙。
指先がスマホの端をなぞる。
「じゃあ、どうすればいい」
「まず、“既読=評価”って解釈を外せ。評価は返信の中身で出る」
「でも返信来ないと分からない」
「分からないものを、悪い方に決め打ちしてるのがお前」
相談者は小さく息を吐く。
「……確かに」
「もう一つ。間隔」
「間隔?」
「送る頻度。相手のテンポより早いと、追われてる感じになる。止まる」
「じゃあ合わせる?」
「完全には無理。でも“相手が返してきた速度より、少し遅く返す”くらいでいい」
「駆け引きみたいで嫌だな」
「駆け引きじゃない。呼吸合わせてるだけ」
相談者は少し笑う。
「呼吸か」
「あと、終わり方」
「終わり?」
「“返さなくていい形”で終われ。質問で締めるな。相手にボール残すな」
「例えば」
「“了解!また明日〜”とか。“それいいね”で止めるとか。会話を閉じる側に回る」
「自分から終わらせるの、怖い」
「放置されるよりマシだろ。主導権がある分、ダメージ軽い」
少し間。
相談者はスマホの画面を消した。
「もし、ほんとに嫌われてたら?」
「その時は既読以前に、会話自体が減る。既読スルーだけで判断するな」
「……じゃあ今は」
「ただの“区切り”」
相談者は立ち上がる。
ドアの前で振り返る。
「また既読で止まったら?」
「一回だけ様子見て、追い送信しない。それで終わり。次は別の話題で普通に話せ」
「怖いけど」
「怖いままでいい。やり方だけ変えろ」
ドアが閉まる。
既読は、拒絶の証明じゃない。
ただ、会話が一度、呼吸を止めただけだ。