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#読み切り
相談者は座ってから、少しだけ間を置いた。
「“ノリ合わないよね”って言われるんですよ」
蓮司は視線を向ける。
「誰に」
「クラスのやつら。悪口ってほどじゃないけど、軽く」
「どういう場面だ」
「みんなでふざけてる時とか、テンション上がってる時」
「乗らないのか」
「乗れない」
即答だった。
「無理にやると浮くし、やらないと冷めてるって言われる」
沈黙。
「どっちにしてもズレる」
「そう」
相談者は机に指を置く。
「で、“ノリ悪い”とか“合わない”ってなる」
「気にするか」
「ちょっとは」
少し間。
「嫌われるよりはマシだけど」
「距離はできる」
「できる」
蓮司は頷く。
「何が合ってないと思う」
「テンションの上げ方」
「具体的に」
「大きい声出したり、オーバーにリアクションしたり」
相談者は肩をすくめる。
「そういうの、できなくはないけど疲れる」
「長く続かない」
「うん」
沈黙。
「じゃあ合わせるか?」
「無理」
相談者は即答する。
「一瞬ならできるけど、ずっとは無理」
「だろうな」
蓮司はあっさり言う。
短い沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「合わせない前提で動け」
相談者は眉を寄せる。
「それでいいのか」
「いい」
蓮司は続ける。
「“ノリが合う”ってな」
「うん」
「同じテンションで騒げるって意味だけじゃない」
「じゃあ何」
「会話のリズムとか、間の取り方」
相談者は少し考える。
「静かなやつでも合う人はいるってことか」
「いる」
沈黙。
「今のグループは?」
「騒ぐ系」
「じゃあズレるのは普通だ」
相談者は小さく笑う。
「環境の問題か」
「半分はな」
少し間。
「もう半分は?」
「自分がどこに合わせるか選んでない」
相談者は顔を上げる。
「選ぶ?」
「全部に合わせようとしてる」
「……ああ」
「無理だろ」
「無理だな」
沈黙。
「じゃあ切り分ける」
蓮司が言う。
「この場では聞き役、別の場では普通に話す」
相談者はゆっくり頷く。
「役割分ける感じか」
「そう」
少し長い沈黙。
相談者は立ち上がる。
「ノリって性格だと思ってた」
ドアの前で振り返る。
「場所でも変わるんだな」
蓮司は短く言う。
「相手次第だ」
“ノリが合わない”は、能力の問題じゃなくて、相性と場の問題でもある。
全部に合わせる必要はない。
合う場所で合えば、それでいい。
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