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羽海汐遠
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#探偵
橘靖竜
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月詠 朱猫
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祝福の減衰。
その報告が、神殿に上がったのは三日後だった。
地下闘技場で発生した異常事例。
複数名の祝福出力が一時的に低下。
うち一名は恒常的な弱体化。
神殿は、即座に動いた。
祝福は神の恩寵。
それが人為的に損なわれるなど、許されない。
学院。
昼休み。
レオンは、視線に気づいていた。
廊下の端。
白い法衣。
神殿騎士。
胸の紋章は《浄化》。
祝福の異常を感知する力。
視線が、こちらを向いている。
冷たい。
測る目。
その瞬間。
胸の奥が、ざわつく。
騎士が一歩近づく。
「少し話を聞こう」
拒否権はない声。
周囲がざわつく。
祝福泥棒。
噂はもう広がっている。
「何の話ですか」
「地下闘技場。減衰事例」
否定できる。
証拠はない。
だが。
騎士が手を伸ばした瞬間。
レオンの胸が脈打つ。
――奪える。
強い祝福。
《浄化》。
上位系統。
触れれば。
どれだけ強くなれる?
喉が鳴る。
騎士の眉がわずかに動く。
「……妙だな」
空気が張り詰める。
レオンは一歩下がる。
触れたら終わる。
ここで奪えば、確定する。
「来てもらう」
その瞬間。
石畳の向こうから怒号。
「待て」
兄だ。
《剣聖候補》の紋章が光る。
周囲の空気が震える。
「弟に何の用だ」
騎士は淡々と答える。
「祝福減衰の調査だ」
「証拠は」
「疑いがある」
兄の視線がレオンに向く。
初めて見る顔。
困惑。
そして、わずかな警戒。
「……何かしたのか」
その問い。
信じている兄の声ではない。
疑っている声だ。
「してない」
嘘。
半分だけ。
騎士が口を開く。
「触れさせてもらうだけでいい」
祝福の波長確認。
それで分かるのか?
分からない。
だが、危険だ。
近づくな。
触れるな。
レオンは後退する。
周囲がざわつく。
「逃げるのか」
その言葉で、決まった。
レオンは走った。
廊下を駆ける。
背後で剣が抜かれる音。
兄の声。
「待て、レオン!」
待てない。
捕まれば、終わる。
中庭を越え、外壁へ。
騎士の気配が迫る。
速い。
祝福持ちの速度。
追いつかれる。
そのとき。
肩を掴まれる。
振り向く。
兄。
「逃げるな」
強い腕。
温度。
触れている。
胸が爆ぜる。
――奪える。
《剣聖候補》。
最上位に届く祝福。
これを奪えば。
全部終わる。
全部変わる。
一瞬で、上に立てる。
喉が震える。
視界が白む。
触れている。
今なら。
兄の光が、手に入る。
レオンの手が、兄の腕を握る。
紋章が、揺らぐ。
「……っ」
兄の目が見開く。
レオンは、歯を食いしばる。
離せ。
離せ。
これを奪ったら。
戻れない。
家族も。
学院も。
世界も。
何も。
レオンは、叫ぶ。
「離せ!」
自分に向けて。
手を振り払う。
兄が後退する。
紋章は――
かすかに、揺れただけ。
奪っていない。
まだ。
騎士が迫る。
レオンは壁を越えた。
学院の外へ。
祝福の光が届かない区域へ。
夜。
路地裏。
息が荒い。
手が震える。
兄の祝福。
奪えた。
確実に、奪えた。
なのに。
奪わなかった。
なぜ?
怖かったからか。
それとも。
まだ、人間でいたいからか。
遠くで鐘が鳴る。
神殿の召集鐘。
調査が本格化する。
祝福減衰。
異端。
祝福泥棒。
その標的は、もう定まっている。
レオンは初めて理解する。
これは隠せない。
世界が、敵になる。
それでも。
胸の奥の声は消えない。
――奪えば、生き残れる。
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