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評議会は、ついに期限を定めた。
三十日。
その間に因果を証明できなければ、無色は隔離。
決定は静かに、しかし確実に下された。
王太子は署名を拒んだ。
だが王は言う。
「時間は与えた」
父としてではない。
統治者として。
「感情で国を揺らすな」
その言葉は、鋭い。
王太子は何も返さなかった。
夜。
庭園。
透明な星は、いまや七つ。
増加は止まらない。
エリュネは噴水の縁に立っていた。
「三十日」
「聞いたか」
振り返る。
彼は疲れている。
だが瞳は揺らがない。
「私は、証明対象ですね」
「違う」
「ですが実質は」
彼は一歩近づく。
今夜は距離が短い。
「君は対象ではない」
「ならば何ですか」
問い。
彼は、少しだけ言葉を探す。
「……基準だ」
「基準」
「新しい基準になる可能性だ」
金色の星は、さらに二つ減衰している。
青も不安定。
爆発的な愛は、持続しない。
数値はそれを示し始めている。
「殿下は」
エリュネは静かに言う。
「私を愛しているのですか」
直截な問い。
彼は息を止める。
これまで曖昧にしてきた核心。
「分からない」
正直な答え。
「だが」
続ける。
「君がいない未来を、私は選べない」
胸が締めつけられる。
エリュネの呼吸が乱れる。
透明な星が、強く脈打つ。
「それは執着ですか」
「かもしれない」
「独占欲」
「否定しない」
彼は逃げない。
「だが、それでもいい」
彼の声は低い。
「私は君を手放さない」
金色は出ない。
爆発しない。
ただ、静かな熱がある。
エリュネは自分の胸に触れる。
波は安定している。
だが、強い。
「私は」
言葉が途切れる。
初めて、迷う。
合理的な答えが出ない。
「殿下が他の誰かを選ぶ未来を想像すると」
胸が鋭く痛む。
明確な拒絶反応。
透明な星が一瞬、白く輝く。
彼が息を呑む。
「それは」
「分かりません」
だが、否定できない。
不快ではない。
恐怖でもない。
ただ、受け入れられない。
彼は、ゆっくりと手を伸ばす。
触れない。
寸前で止める。
「触れてもいいか」
確認。
彼は王太子だ。
許可を求める必要はない。
それでも求める。
エリュネは、数秒考える。
胸の振動は、穏やかだ。
「……はい」
指先が触れる。
ほんのわずか。
熱が伝わる。
金色ではない。
爆発もしない。
だが、確かに存在する温度。
その瞬間。
空の透明な星が、一斉に同期する。
脈動。
王宮の観測塔が騒然となる。
「波形、安定化!」
「減衰停止!」
金色の一つが、消失を免れる。
完全ではない。
だが持ち直した。
爆発ではなく、調律。
彼は息を吐く。
「これが、答えか」
「答え、ではありません」
エリュネは言う。
「まだ仮説です」
だが、確信に近い。
愛は強度ではなく、共鳴かもしれない。
一方的な爆発ではなく。
選び、触れ、調整すること。
彼は、彼女の手を離さない。
強くもない。
弱くもない。
「三十日あれば十分だ」
「何を」
「証明する」
彼は微笑む。
「これは欠陥ではないと」
エリュネは、初めて小さく笑った。
それは色にならない。
だが確かに、温度を持つ。
告白ではない。
愛という定義にも届かない。
それでも。
手は離れなかった。