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ドアが開く。
相談者は座る前から言った。
「俺、キャラ変えたい」
蓮司は顔を上げる。
「何キャラ」
「いじられ軽めの、ちょいバカ枠。明るい、ノリいい、深い話しないやつ」
「機能してるな」
「してる。だから変えにくい」
椅子に座る。
「最初は楽だった。考えなくていいし、話振られるし、浮かない。でもさ」
少し間。
「もう違う」
「中身が追いつかなくなった?」
「逆。中身が増えた」
蓮司は頷く。
「で、増えた中身出すと?」
「“どうした急に”って顔される。ちょっと真面目に話すと、笑いに戻される。俺も戻す。戻せる。だから固定される」
「自分で補強してるな」
「分かってる」
沈黙。
「怖いのはさ」
「何」
「変えた瞬間に、居場所なくなること」
「今の居場所は、今のキャラ用だからな」
「だろ」
蓮司は椅子を傾ける。
「じゃあ一気に変えるな」
「徐々に?」
「比率変えろ」
「比率」
「今が“明るい9:真面目1”なら、“7:3”にする。いきなり逆転させるから事故る」
「そんな計算いる?」
「いる。人は急変に弱い。変化は“違和感が出ない範囲”で積む」
相談者は机を見る。
「でもさ、俺が変わるの、周りは歓迎しないかも」
「歓迎される変化しかやらないなら、一生固定」
「きつ」
「キャラってさ、周りが作る半分と、自分が維持する半分。お前、維持率高い」
「戻してたからな」
「戻すのやめろ。真面目出した後、笑いに自分で戻すな。そのまま置いとけ。数秒の違和感に耐えろ」
少し沈黙。
「耐えられなかったら?」
「一人にだけ出せ。全体じゃなくて、信頼度高い1人。そこから広げる」
「テスト運用か」
「そう。本番いきなりは失敗率高い」
相談者は小さく笑う。
「俺さ、明るい俺が嫌いなわけじゃない」
「だろうな」
「でもそれしかないのが嫌」
「なら増やせ。削るんじゃない」
「削らない?」
「明るいも残せ。真面目も足せ。二刀流にしろ。人は単一より混ざってる方が強い」
立ち上がる。
「今日、1回だけ真面目出す」
「誰に」
「一人。笑いに戻さない」
「いい」
ドアの前で振り返る。
「変わったら、嫌われるかな」
「嫌われる可能性はある」
「あるのかよ」
「でも残るやつは“キャラ”じゃなく“お前”で残る」
少し間。
「選別だな」
「自然とな」
ドアが閉まる。
キャラは鎧になる。
でも着続けると、皮膚になる。
脱ぐんじゃない。
もう一枚、重ねるだけでいい。