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夕方の教室は、オレンジと青が混ざったみたいな色をしていた。
窓際の席。
晴翔は、ぼんやりスマホを眺めていた。
クラスメイト達の笑い声。
机を引く音。
部活へ向かう足音。
いつも通りの放課後。
……のはずだった。
「また隠した」
前の席。
瀬那が、反射みたいにスマホ画面を伏せる。
ここ最近、ずっとそうだった。
誰かに見られるのを異常に嫌がる。
特に。
動画アプリの“おすすめ欄”。
「何見てんの?」
「別に」
「いや絶対なんかあるじゃん」
瀬那は答えない。
ただ、落ち着かない様子で通知を消している。
晴翔は少し笑った。
「エロ系?」
「違ぇよ」
「じゃ何」
そこで。
瀬那が、妙に真面目な顔をした。
「……おすすめ、見んな」
「は?」
「マジで」
「何その都市伝説」
瀬那は、小さく周囲を見た。
誰かに聞かれたくないみたいに。
「見たら引っ張られる」
「何に」
「出てきた未来に」
晴翔は、思わず吹き出しかけた。
でも。
瀬那は笑っていなかった。
その時。
教室後ろで、ガタンッと音がした。
全員、少しだけそっちを見る。
美玲だった。
スマホを落としている。
顔色が悪い。
「……やだ」
小さい声。
隣の友達が、心配そうに覗き込む。
「どうした?」
「これ……」
震える手。
スマホ画面が少し見えた。
おすすめ欄。
そこに並んでいたタイトル。
【友達が離れていくサイン】
【クラスで浮いた人の末路】
【一人で昼を食べる時に見る動画】
晴翔の背筋に、変な寒気が走る。
「気にしすぎじゃない?」
友達が苦笑する。
でも。
美玲は笑えなかった。
「昨日、“嫌われ始めた人の特徴”って出たの」
教室が少し静かになる。
「そしたら今日……」
その瞬間。
教室前方。
男子グループの一人が、何気なく言った。
「最近ちょっと重いよな」
小さい声。
でも。
静かになった教室では、やけにはっきり聞こえた。
美玲の顔から、血の気が引く。
誰も、すぐ否定できなかった。
偶然だろ。
晴翔はそう思った。
思ったのに。
胸の奥が、妙にざわつく。
ブッ。
スマホが震える。
晴翔は何気なく画面を開いた。
動画アプリ。
ホーム。
おすすめ欄。
そこで。
指が止まる。
【友達に嫌われた時の対処法】
「……は?」
心臓が、変な跳ね方をした。
次。
【空気が読めない人の特徴】
【周囲から避けられる人の共通点】
「何これ」
その瞬間。
瀬那が、勢いよくスマホを掴んだ。
「閉じろ」
珍しく強い声。
「おい」
「いいから閉じろ」
瀬那の顔は、本気で青ざめていた。
「それ、見続けるな」
「意味分かんねぇって」
「だから」
瀬那が、小さく息を飲む。
「当たるんだよ」
教室の空気が、少しだけ冷える。
「おすすめが出たやつから、そうなる」
晴翔は、冗談だと言い返そうとした。
でも。
その時。
斜め後ろから、声が飛んだ。
「なぁ晴翔」
振り向く。
湊だった。
少し困った顔。
「最近さ」
嫌な予感。
「なんかお前、空気ズレてね?」
沈黙。
一瞬。
教室の音が、全部遠くなった気がした。
その横で。
瀬那だけが、絶望したみたいな顔をしていた。
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