テラーノベル
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「なあ、どうだった?」
誰かが、やけに明るい声で言った。
答えを期待していない声。
「暗かった?」
「静かだった?」
「それとも、落ち着いた?」
くすくす笑いが重なる。
「でもさ、思ったより大人しかったよな」
「暴れないんだもん」
「普通、ああいう状況になったら泣くか叫ぶかするだろ」
遥は、俯いたまま動かない。
「なに? 今さらショック?」
「遅くね?」
誰かが、顎を指で軽く叩く。
「自分がどういう立場か、やっと理解した感じ?」
「今まで、分かってなかったのが不思議だけど」
笑い声。
楽しんでいる声。
確実に“味わっている”声。
「埋められたのにさ」
「まだ“人間の顔”してるの、ウケる」
「なあ、鏡あったら見せたいよな」
「『これが埋められた後の顔です』って」
誰かが言う。
「でもさ、正直言うと」
「お前が悪いよ」
その言葉で、空気が一瞬だけ静まる。
全員が、続きを待っている。
「だって、嫌なら最初からちゃんと拒否すればよかったじゃん。
嫌って顔、しなかったよな?」
「震えてただけ」
「それってさ。
受け入れてたってことじゃね?」
遥の喉が、かすかに鳴る。
「……ちが……」
声にならない。
誰も拾わない。
「違わない違わない」
「埋められてる最中もさ、抵抗しなかっただろ」
「つまり――」
「“それでいい”って思ってるってこと」
言葉が、遥の中に沈んでいく。
(……俺が)
(俺が、悪い……?)
「ほら、黙ってる」
「反論しないってことは、認めてるんだろ」
「自分でも分かってるんだよ」
「どう扱われるのが“正解”か」
誰かが、楽しそうに息を吐く。
「お前ってさ。壊される役、似合うよ」
「抵抗しないし」
「覚えてるし」
「あとで誰にも言わない」
「最高じゃん」
遥の指先が、わずかに震える。
(違う)
(違うはずなのに)
でも、否定する言葉が出てこない。
「なあ」
低い声。
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「次、どうする?」
「また同じ?」
「それとも、もうちょい“きつめ”行く?」
選択肢の形をした脅し。
「まあ、どっちでもいいけど」
「お前、耐えるだろ」
断定だった。
「だってさ、今日、埋められて」
一拍置いて。
「それでも、まだここにいるんだから」
遥は、ゆっくり息を吐く。
(……俺が)
(俺が、悪いから)
(ちゃんと、拒否しなかったから)
(ちゃんと、壊れなかったから)
(だから、次が来る)
その考えが、
一番自然に感じてしまうことが、
何よりも残酷だった。
コメント
1件
第26話、読み終わりました……。胸がぎゅっとなる回でしたね。 遥くんが「自分が悪い」と納得してしまう流れが、あまりに自然で苦しかったです。抵抗しなかったから、ちゃんと壊れなかったから、だから次が来る——その思考のループが、読んでいるこちらの息まで詰まらせるようでした。周囲の「楽しんでる声」と、遥くんの沈黙の対比が静かに効いていて、ラストの一文がずっしり残ります。ruruhaさんの心理描写、本当に繊細で好きです。続き、気になります。