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放課後。
教室には、晴翔しか残っていなかった。
いや。
正確には違う。
“晴翔だけが、残された”。
そんな感じだった。
窓の外は、夕方になりかけている。
オレンジ色の光が、空席ばかりの教室を長く照らしていた。
瀬那の席を見る。
空。
最初から誰もいなかったみたいに、綺麗すぎる。
晴翔はゆっくり近づく。
机に触れる。
冷たい。
でも。
覚えている。
ここで瀬那が寝ていたこと。
授業中、シャーペン回して怒られてたこと。
コンビニのパンばっか食ってたこと。
全部。
ちゃんと覚えている。
「何で……」
声が掠れる。
スマホを開く。
トーク履歴。
検索欄。
『瀬那』
ヒットしない。
インスタ。
なし。
連絡先。
なし。
写真。
なし。
昨日まで、確かにあった。
なのに。
全部消えている。
晴翔の呼吸が浅くなる。
ブッ。
通知。
動画アプリ。
おすすめ欄。
【“消去後も相手を覚え続ける人へ”】
晴翔の指が止まる。
次の動画。
【“唯一の観測者になった場合の対処法”】
「観測者……?」
小さく呟く。
その時。
教室の扉が開いた。
担任だった。
「まだいたのか」
晴翔は反射的に聞く。
「先生」
「ん?」
「瀬那って……」
そこまで言って、言葉が止まる。
担任は少し考えてから首を傾げた。
「誰だ?」
また。
「いや、同じクラスの――」
「このクラスは三十五人だぞ」
即答。
「ずっとな」
空気が凍る。
晴翔は教室を見回す。
席。
数える。
三十五。
最初から。
本当に最初から、一席分も余っていない。
なのに。
晴翔だけは知っている。
“そこにいた”。
担任は少し困った顔をした。
「最近疲れてるのか?」
「……」
「今日は帰れ」
扉が閉まる。
静寂。
晴翔は、もう一度スマホを見る。
おすすめ欄。
更新。
【“削除された人間は、記憶の外側へ移動します”】
次。
【“ただし、強い執着を持つ人物には痕跡が残る場合があります”】
晴翔の心臓が止まりそうになる。
“執着”。
その単語だけ、妙に赤く見えた。
その瞬間。
教室後ろ。
カタン。
小さな音。
晴翔が振り向く。
誰もいない。
でも。
一番後ろの席。
窓際。
机の上にだけ、見覚えのある黒いイヤホンが置かれていた。
瀬那のものだった。
コメント
1件
あああっ、第11話読んだよ…!!😭💦💦 晴翔だけが瀬那のこと覚えてるの、マジで胸が痛すぎる…「誰だ?」って先生に言われた瞬間の絶望感、想像しただけで泣ける😢✨ 教室の席が最初から35で、誰も欠けてないって思われてるのに、晴翔だけが“そこにいた”って確信してるの、すごく切ないよ… 最後に出てきた黒いイヤホン、瀬那のものだよね?!消されたはずの痕跡が残るって、何かの伏線なのかな…次話が待ちきれない〜!!🎀💕