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#読み切り
ruruha
1,191
み う .
眠狂四郎
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ドアが開く。
相談者は椅子に座ると、ため息をついた。
「周りと同じように生活してるはずなのに、自分だけすごく疲れてる気がするんだ」
蓮司は向かいに座る。
「周りって?」
「学校行って、授業受けて、友達と話して、部活してる人もいる。みんな普通に毎日過ごしてるように見える」
「お前も同じことはしてる」
「してる。でも帰ると何もしたくなくなる。休みの日も、寝て終わることがある」
少し間が空く。
「それで、自分だけ体力ないのかなって思う」
蓮司は少し考えた。
「本当に同じ生活か?」
相談者は首を傾げる。
「学校は同じだけど」
「学校にいる時間が同じなのと、使ってるエネルギーが同じなのは別だ」
相談者は黙る。
「例えば?」
「授業を受けるだけでも、ずっと周りを気にしてるやつもいれば、ほとんど気にしないやつもいる」
「……いるな」
「友達と話す時も、自然に話せるやつもいれば、一言しゃべるたびに考えるやつもいる」
相談者は苦笑した。
「後者だ」
「だったら疲れ方は変わる」
静かな時間が流れる。
「でも、それって甘えじゃないのかな」
蓮司は首を横に振った。
「甘えって便利な言葉だけど、大体そこで思考が止まる」
相談者は少し笑う。
「言い方」
「本当に知りたいなら、『何で疲れるのか』を見た方がいい」
「何でなんだろう」
「お前、自分で気づいてない作業が多いんじゃないか」
「作業?」
「空気を読む。
相手の表情を見る。
言い過ぎてないか考える。
変なこと言ってないか振り返る。
嫌われてないか気にする」
相談者は黙った。
「……全部やってる」
「それ、授業にも部活にも書いてない仕事だ」
少し間が空く。
「仕事か」
「しかも給料は出ない」
相談者は思わず笑った。
「最悪だな」
「だから疲れる」
笑いが収まると、相談者は少し真面目な顔になった。
「でも、みんなもそういうこと考えてるんじゃないの」
「考えてる人もいる」
「じゃあ違いは?」
「切り替えられるかどうか」
相談者は顔を上げる。
「切り替え?」
「学校が終わったら学校も終わる人もいる。でも終わってからも、『あの言い方変だったかな』『あの時ああすればよかったかな』って続きを始める人もいる」
相談者は思わず笑った。
「家でも放課後やってる」
「しかも一人反省会付き」
「それ毎日開催してる」
「参加者一人でな」
二人とも少し笑う。
笑ったあと、相談者が小さく言った。
「だから休んでも疲れが抜けないのか」
「体じゃなくて、頭が働き続けてるからな」
相談者はゆっくり息を吐いた。
「何か、自分だけ弱いんだと思ってた」
「同じ一日でも、中身は全然同じじゃない」
「見えない疲れってあるんだな」
「むしろ、そっちの方が説明しにくい」
相談者は立ち上がる。
ドアの前で足を止めた。
「周りと同じ生活をしてるように見えても、同じ一日じゃないのか」
「見えてる部分だけ比べても、答えは出ない」
相談者は静かに頷き、部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
同じ教室で、同じ時間を過ごしていても、心の中でしていることは、人それぞれ違う。
だから疲れ方まで、誰かと同じである必要はないのかもしれない。
コメント
1件
うわ、これめっちゃ沁みたわ……「同じ一日でも中身は全然同じじゃない」って蓮司の言葉、ガチで刺さった。「空気読む」「表情見る」「振り返る」って全部無意識にやってて、それだけで消耗してるんだよな。しかも給料出ないしな(笑)。見えてる部分だけで比べて「自分だけ弱い」って思い込むの、あるあるすぎて泣ける。ラストの「疲れ方まで誰かと同じである必要はない」って優しさにじわじわ来た。ruruhaさん、また日常のリアルな悩みを丁寧に拾ってくれてありがとうございます!