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私は今、霊媒師と共に実家にいる。なぜ霊媒師がいるかって?この家に悪霊が憑いていると思うからである。


私は堀内麗奈。大学四年生。この家には7年前に、転勤族の父の影響で引っ越してきた。私と母と父と、2歳年下の弟の昭乃(アキノ)、そして当時飼っていた犬のペコと一緒に。あの時はこんなことになるなんて思ってなかった。こんな不幸になるなんて!

 


 まず、この家に引っ越してきた二ヶ月後にペコが死んだ。急なことだった。

私とアキ(昭乃)と二人で親に懇願して5年前からウチに来てくれたペコ。私にとってかけがえのない家族の一員だった。一週間ぐらい学校は休んだっけ。アキもそうだったと思う。

父と母も哀しかっただろうが、父は仕事を休むわけにはいかなかったし、母も私たちがこれ以上病んではいけないからいつも通りな感じだった。でもこれは不幸の始まりにすぎなかった。


 それから一年後、アキが家に引きこもるようになった。学校でイジメに遭っていたらしい。

アキは優しくて明るい、ムードメーカーのような存在だった。まさかイジメに遭っていたなんて。

私は弟の苦しみに気付けなかった。私達は周りからも仲のいい姉弟と言われていた。小さい頃は実家の前にある朝日公園でよく二人で遊んでいた。だが引きこもり始めてからというもの、アキは私とは口を聞いてくれなくなってしまった。


 それから一年後。私が大学一年の夏である。地元の大学であったが、私は実家を出てアパートで生活をしていた。あの家に居たくないという気持ちがあったというのが理由である。

ある日の夜中、母から電話がかかってきた。父に癌が発覚した。早期発見といえる状態ではなく、これからどうなるか分からないと医者からは言われたそうだ。

当然は会社は長期間休まないといけなくなり、母はパートを始めると言った。私は大学を辞めると母に言ったが、母は「私が頑張るから大学は出なさい」と言ってくれた。私は大学を出て就職し、父と母に恩返しするために大学に行き続けることにした。

 


 その頃私は自動車学校にも通っていた。ある日の教習のことである。その日はいつもとは違う先生が担当してくれた。30代の男性で少し髪と髭が長い人という感じだった。名前は北野と言った。

いつも通り車に乗り、ライトの確認を終わらせて先生が車に乗った後、彼の第一声がこうであった。

「堀内さん。あなた最近悪いことがあったんじゃないかな。」

驚いた。いきなり言われたからということもあったが、確かにその通りであった。

私はこれまでの経緯を話しつつ教習を進めた。一通り教習を終えた後、私は彼にこう尋ねた。

「出来るだけ周りには気づかれないように振る舞っているつもりだったんですけど、今の私って暗いですか。」

私の問いに対し、彼はこう答えた。

「いつものあなたが分からないからなんとも言えないね。あなたを受け持ったのも初めてだし。」

不思議そうにした態度を見せる私を見て彼はこう続ける。

「実は僕一応ね、霊能力者なんだよ。内緒で副業として霊媒師をやってる。だからなんとなくその人が今どんな目に遭っているかが分かることがあるんだよね。」

霊能力者!?霊媒師!?いきなりそんなこと言われても訳が分からない。

私は当時霊なんて信じてなかったし、信じたくもなかったが、こう言われると気になったので彼に尋ねた。

「ということは、私に悪霊でも取り憑いているということでしょうか。」

彼はこう返した。

「いやいや、あなたには何も憑いてないよ。可能性としてあるのは、君の家族のうちの誰かか、君の周りの物、例えば家とか。」

心当たりがあった。引っ越してきた実家である。あの家に引っ越してきてから不幸に見舞われているからだ。私がこう考えていると彼はこう言った。

「すまないが次の教習があるからもう行かないと。僕の名刺を渡しておくから何か手伝って欲しいことがあったら連絡してね。くれぐれも自動車学校には内緒でね!」

正直彼が霊媒師だということは信じきれなかったし、よく分からなかったが、もしかして一連の不幸が悪霊のせいだったら?という気持ちが芽生え始めたのはこの日からであった。

 

 それから三年経った。私は大学四年の春である。単位は勉強を必死に頑張った甲斐があり順調に取ることができた。就職も地元では有名な企業から内定をもらえた。ここで頑張ることができれば、闘病中の父と私のために頑張ってくれている母にも少しは恩返しをすることができるだろう。


アキはまだ引きこもっている。私が社会人になって頑張っている姿を見せることができれば、アキの心のなかも変わってくれるだろうか。決して幸せと言える家庭環境ではないが、これからは私が支えていこうと張り切っていた。


ある日の夜である。不意に母に電話をかけたくなった。しかし、何度コールをしても母は電話にでなかった。こんなことはこれまでなかった。

私は心配になり、ダメ元でアキに電話をしてみることにした。すると電話が繋がった。電話越しであってもアキと話すのは数年ぶりだ。私はアキにこう尋ねた。

「アキ、お母さんと連絡が取れないんだけど、何か知ってる?」

するとアキはこう答えた。

「分からない。分からないけど、もう二日ご飯を貰ってない。これまで毎日部屋まで持ってきてくれてたのに。」

なんだって?どうなってるの?私はすぐさまこう返した。

「あんた二日もご飯食べてないの!?それにお母さんに何かあったってことじゃない。早く部屋でてお母さんを探してよ!」

私の絶叫に対してアキはこう返した。

「無理だ。もうベッドから動けない。体が動かないんだよ姉さん。ずっと何かが僕を見てるんだ。きっとぼくらは呪われてるんだよ。僕ら家族揃ってみんなもうすぐ死ぬんだよ!」

私は弟との電話を切り、すぐさま例の自動車学校教員の名刺をみて電話をかけた。

やはりあの家には悪霊がいる。すぐにでも彼と一緒に実家に行かなければ。電話が繋がった。

「もしもし、以前教習中に北野先生に私の不幸について相談した堀内麗奈なんですけど、大至急実家に来てもらいたくて!」

彼はこう返した。

「落ち着いてよ堀内さん。急に言われても。僕にも予定があってだね。」

彼の言うことを聞き流し、私は言い放つ。

「とにかく早く実家の近くの朝日公園に来てください。来ないと副業の件学校にバラしますから!」

そう言い捨てながら電話を切った。私だけでも早く実家に行かなければ。

 


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