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『次、席空くね』
“透”の声。静か。でも。教室全体に、重く響いた。
透
喉が乾く。 席。白石の席。最初は、ただの空席だった。 でも今は違う。 “未読側”が座る場所。 存在が薄れた人間の、残骸みたいな席。 そして。次は、自分。 凛は、机に突っ伏していた。スマホを握ったまま。
【未読13件】
画面が、ずっと光っている。
奈央
返事がない。伊織が、恐る恐る肩を揺する。
伊織
凛が、ゆっくり顔を上げる。 全員息を呑む。目。焦点が合っていない。
凛
透の背筋が凍る。 声。少し遅れて聞こえる。通信越しみたいに。
凛
結衣と同じ。白石と同じ。 透は、言葉が出なかった。 その時。 ガラッ。 教室の扉。担任が入ってくる。 でも。誰も安心しない。 担任だけ、空気が違う。普通すぎる。
担任
笑っている。異常に気づいていない。 いや。気づけていない。 担任が、出席簿を見る。
担任
透の心臓が跳ねる。まただ。
担任
教室が静まり返る。担任が、教室を見渡す。 でも。透のところで、視線が滑る。 完全に。認識されてない。
伊織
伊織が、少し強めに言う。
伊織
担任
出席簿を見る。数秒。沈黙。
担任
でも。その反応。 思い出してるというより、“合わせてる”だけだった。
担任
透の胸が冷たくなる。 存在が、曖昧になっている。その時。 ブッ。 通知。でも。透のスマホじゃない。 クラス全員。同時。全員が、ゆっくり画面を見る。
送り主:【朝比奈透】
透
開く。全員、同じ文章。
【空席にしないで】
教室が凍る。その瞬間。透の席。 ギ……。 椅子が、ひとりでに動く。少しずつ。後ろへ。 白石の席の方向へ。
奈央
伊織
でも。止まらない。 ギ…… ギ…… 床を擦る音。 透は、動けなかった。 まるで。席ごと、引っ張られているみたいに。 そして。透の視界。一瞬、ノイズが走る。 教室。ぼやける。 クラスメイト達の顔。輪郭が崩れる。 音も遠い。まるで。ガラスの向こう。
透
怖い。消える。このまま。 誰にも認識されなくなる。 その時。奈央が、突然立ち上がる。 ガタン!!
奈央
教室に響く声。
奈央
全員が止まる。奈央は、涙目だった。
奈央
震える声。
奈央
その瞬間。透のスマホ。 ブッ。
【相馬奈央:既読確認】
透の喉が冷える。奈央のスマホ。同時通知。
【未読1件】
送り主:【朝比奈透】
奈央の顔から、血の気が引いた。
『お餅』🌹
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るしゅ