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ハチ
56
教室に入った瞬間、違和感があった。 いつも通りの朝。 いつも通りの席。 いつも通りのクラスメイト。 なのに、何かが引っかかる。
佐久間
近くの席の水野に声をかける。
水野
佐久間
水野
佐久間
水野
即答だった。
佐久間
黒板の横に貼られた名簿を見る。 確かに、28人分の名前が並んでいる。 問題ない。 なのに。 佐久間は、教室を見渡した。 一人、二人、三人―― 数える。 途中で、分からなくなる。
佐久間
もう一度。 今度は、ゆっくり。 一人、二人、三人――
“二十九人”。
佐久間
思わず声が漏れる。
水野
佐久間
もう一度数える。 一人、二人――
“二十八人”。
佐久間
今度は、ちゃんと合っている。
佐久間
そう呟いた瞬間。 誰かと、目が合った。 知らない顔。 一瞬だけ。 次に見たときには、その“顔”はどこにもなかった。
佐久間
水野
佐久間
授業が始まる。教師が入ってくる。
教師
いつも通りの声。 いつも通りの空気。 だが。
教師
教室が静かになる。
教師
名前が呼ばれていく。
生徒1
生徒2
生徒3
問題なく進む。 佐久間の番。
教師
佐久間
そのまま続く。最後の名前。
教師
終わった。
佐久間
何かがおかしい。
佐久間
水野
佐久間
水野
佐久間
もう一度、教室を見渡す。 全員、見覚えがある。 “さっきの顔”は、いない。 ――はずだった。
翌日。 教室は、いつも通りだった。 28人。 何も問題はない。 ただ。 出席番号14番の席に座る“佐久間”は、一度も自分を数えなかった。 ――最初から、余りは決まっていたみたいに。
昼休み。 佐久間は、また数えた。 一人、二人、三人――
“二十九人”。
佐久間
今度は、はっきり分かった。
窓際の一番後ろ。 そこに、“席が一つ増えている”。
佐久間
その席に、誰かが座っている。 顔が、見えない。 俯いている。
佐久間
声をかける。 反応がない。 近づく。 一歩、二歩。 距離が縮まる。 その瞬間。 その“誰か”が、ゆっくり顔を上げた。 佐久間だった。
佐久間
目が合う。 “もう一人の自分”が、口を開く。
??
佐久間
??
佐久間
??
その瞬間。 教室の音が消えた。 振り返る。 誰も、動いていない。 全員、止まっている。 時間が止まったみたいに。
??
前を見る。“それ”が立ち上がる。
??
佐久間
??
佐久間
??
気づく。 自分は、ずっと数えていた。 “どっちが余ってるか”。
??
教室の空気が、歪む。
??
佐久間は、口を開こうとして―― 言葉が出なかった。
どちらも、同じ記憶を持っていた。
どちらも、“自分”だった。
??
その瞬間。 教室の全員が、一斉にこちらを見た。 そして、同時に口を開く。
全員