テラーノベル
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翌朝。 透は、ほとんど眠れなかった。 動画。白石の声。 暗闇の中で光っていた、大量のスマホ。 全部、頭から離れない。 学校へ向かう電車。車内。 みんな普通にスマホを見ている。 笑っている。動画を見ている。音楽を聴いている。 なのに。透には、 別のものが見えていた。
【入力中…】
【入力中…】
【入力中…】
乗客の頭上。文字が浮かんでいる。 誰も気づいていない。 女子高生。笑いながら友達と話している。 でも。頭上。
【どうして返事くれないの】
サラリーマン。
【既読ついてたよね】
小学生。
【ぼくなんかした?】
透
気持ち悪い。 世界中。“送れなかった感情”で埋まっている。 その時。 ブッ。 透のスマホ。
【未読9件】
また増えていた。そして。
【白石美咲】
【ねぇ】
【もう時間ない】
透の指が止まる。 時間ない。 どういう意味だ。
学校。教室。空気が重い。 みんな、疲れた顔をしていた。 結衣なんか、明らかに寝ていない。 目が真っ赤だった。
伊織
透
伊織
伊織が小さい声を出す。
伊織
透の喉が冷える。
凛
凛まで、顔色が悪い。
凛
奈央
奈央は何も言わない。 でも。スマホを、ずっと握っている。 その時。 ガラッ。 教室の扉。全員振り向く。担任。その後ろ。 女子生徒。 ……白石。
透
教室が静まり返る。 白石美咲。 立っている。制服。いつも通り。 でも。何かがおかしい。 輪郭。少しぼやけている。 ノイズみたいに、端が揺れている。
担任
普通に言う。誰も、すぐ反応できない。
結衣
白石が、ゆっくり顔を上げる。笑っている。 でも。目が笑ってない。
白石
声。少し途切れている。ノイズ混じり。 通信が悪い通話みたいに。 白石は、自分の席へ向かう。歩く。でも。 足音がしない。 透の背筋が冷える。白石が座る。 ギ……。 椅子だけが鳴る。そして。 白石が、透を見る。真っ直ぐ。
白石
透
教室が静まり返る。
透
その瞬間。 白石の笑顔が止まる。空気が変わる。
白石
小さい声。そして。透のスマホ。 ブッ。
【未読10件】
同時に。白石の輪郭が、少し薄くなる。
結衣
透も見た。肩。透けている。 後ろの黒板が、うっすら見えていた。
白石
白石が、静かに言う。
白石
誰も答えられない。 その瞬間。教室後ろ。 ブッ。 ブッ。 ブッ。 ロッカー。窓際。掃除箱。 教室中から、通知音。 白石が、ゆっくり周囲を見る。 そして。少し泣きそうな顔で笑った。
白石
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