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猫塚ルイ

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柊は、全部覚えている。 回数。 順番。 誰が笑っていたか。 一つも、欠けていない。 だから分かる。 “ズレている”。 教室。昼。 いつも通りの雑音。
生徒A
生徒B
生徒A
言葉が止まる。
生徒B
沈黙。
生徒A
でも、表情だけが残る。 “確かに何かがあった顔”。
柊(同じ)
全員、同じだ。覚えている。 でも、言えない。
柊(違う)
いや。言えないんじゃない。 “言葉にできない形に変わっている”。 柊は近づく。 二人の間。声を出す。
柊(あの時、お前ら)
届かない。 でも。 生徒Aの肩が、わずかに震える。
生徒A
生徒Bを見る。
生徒A
言いかけて、止まる。
生徒A
飲み込む。
柊(分かってる)
分かっているのに。 “そこに触れた瞬間”、言葉が崩れる。
職員室。
教師A
教師B
教師A
紙を置く。
特に変わったことはなかった
いつも通りだった
問題はなかった
教師B
教師A
ページをめくる。
踏んでいた
押さえていた
交代していた
教師B
教師A
教師B
言いかけて、止まる。
教師A
沈黙。
教師B
教師A
教室。 柊は立っている。 “自分がいた位置”。 全員の動きが見える。 でも。誰も、“そこ”を見ない。
柊(同じ証言)
やったことは一致している。 誰が、何回、どうやったか。 全部、同じ。
柊(違う現実)
でも。 “対象が存在しない現実”に書き換わっている。 柊は、黒板を見る。 うっすら残る数字。
15
20
交代
全部、正しい。 でも。 “誰に対してか”だけがない。
柊(俺だ)
一歩、踏み出す。 床が沈む。わずかに。 誰かが、顔を上げる。
生徒C
違和感。 でも。 すぐに逸らす。 柊は、机に手をつく。 触れる。確かに。 世界に干渉できる。
柊(なら)
ノートを開く。 白紙のページ。 指でなぞる。 書く。
『柊』
文字が浮かぶ。はっきりと。
柊(これで)
次の瞬間。 文字が歪む。 崩れる。消える。 何もなかったみたいに。
柊(……違う)
書き直す。 今度は強く。深く。 紙に食い込むくらい。
『柊』
一瞬だけ、残る。 でも。やっぱり消える。
柊(消されてる)
柊が消えているんじゃない。 “名前が拒否されている”。
職員室。
教師B
教師A
教師B
教師A
教師B
教師A
低い声。
教師A
教室。 柊は立っている。 全員を見る。
柊(全部、合ってる)
間違いはない。でも。
柊(足りない)
決定的に。 “自分だけが抜けている”。 黒板。新しい文字。
『おなじ』
『あってる』
『でもいない』
柊は、それを見る。静かに。
柊(じゃあ)
次は。 一歩、前に出る。 誰かの椅子が、わずかに沈む。 誰も座っていないはずの席。 でも。確実に、重さが増えている。
柊(現実を変える)
証言じゃなく。 記録じゃなく。 現実の側を。