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ハチ
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机の中に、ノートが入っていた。 見覚えはない。 表紙には、名前も何も書かれていない。 中を開く。 一ページ目。
「今日からこれ、回すことになった」
誰の字か分からない。 でも、クラスの誰かの字だ。 二ページ目。
「ルールは簡単。書いたら次のやつに回す」
三ページ目。
「絶対に、途中でやめるな」
そこで止まる。 空白のページ。白紙。
神谷
ページをめくる。 途中まで全部、空白。
そして。一番後ろのページ。 そこだけ、文字がある。
「もう読んでるよな」
神谷
日付が書いてある。 明日の日付。 神谷は眉をひそめる。 冗談だと思う。 でも。その下に続く文章。
「たぶん、最初は机の中にあったはずだ」
神谷の手が止まる。
「で、最後のページから見た」
心臓が一拍、遅れる。
神谷
ページを戻る。 さっきの空白。 そこに、文字が浮かんでいる。
「今、戻ったよな」
神谷はノートを落としそうになる。
神谷
さっきまで、何もなかった。 確実に。 でも今は。書かれている。
「気づいた?」
呼吸が浅くなる。 ページをめくる。 一ページずつ。 空白だったはずの場所に。 少しずつ、文章が増えている。
「これ、未来のことじゃない」
「お前が読んだ順番で、後から書かれてる」
神谷
手が震える。
「今、意味分からんって思ったろ」
神谷は、ノートを閉じる。 机に置く。 距離を取る。
神谷
しばらく見つめる。 何も起きない。 深呼吸。 神谷は、もう一度ノートを開く。 さっきのページ。 さらに文章が増えている。
「閉じたよな」
「でもまた開くと思ってた」
神谷
答えは、次の行にある。
「分かってるんじゃない」
「決まってるだけだ」
背筋が冷える。 神谷は、ページを一気にめくる。 後ろへ。 最後のページ。 さっきと同じ。 でも。文章が増えている。
「ここまで来たら、もう止まらない」
神谷
ノートを閉じる。 そのまま、カバンに突っ込む。 帰る。もう見ない。そう決める。
夜。部屋。 カバンの中から、ノートを取り出す。
神谷
手が、勝手に動く。 ノートを開く。 最後のページ。
「開いた」
神谷
その下。
「じゃあ、次はここだ」
ページが、勝手にめくれる。 真ん中あたり。 そこには。さっきまでなかった文章。
「このあと、お前は“書く”」
神谷
即答する。 ペンを持たない。絶対に。 でも。 気づくと、手にペンを握っている。
神谷
手が動く。 ノートに触れる。 ペン先が紙につく。 止められない。
神谷
書いている。 自分の意思じゃない。 文字が浮かぶ。
「次に読むやつへ」
神谷の視界が揺れる。 そのとき。ノートの文字が、変わる。 さっき自分が書いたはずの文字。 それが。 最初からそこにあったみたいに、馴染む。
神谷
最初のページに戻る。 そこに。新しい一行が増えている。
「今日からこれ、回すことになった」
その下。
「神谷が書いた」
神谷は、息を止める。 ノートを閉じる。 もう、分かっている。 これは。未来を書いてるんじゃない。 読んだ結果が、最初に戻ってる。 循環している。 逃げ場がない。
翌日。 机の中。 ノートが入っている。 知らない誰かが、それを開く。 そして。最初のページを読む。
「今日からこれ、回すことになった」
少し下。
「神谷が書いた」
そのさらに下。 空白。 まだ、何も書かれていない。 これから。書かれるから。