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放課後の空気は、少しだけ湿っていた。

窓は開いている。

カーテンがゆっくり揺れる。


机を挟んで、生徒が座っている。

膝の上にスマホ。

画面は消えたまま。


「……既読って」


言いかけて、止まる。

遥は何も言わない。


「なんか、怖いんです」


生徒は、画面を見ないまま言う。


「送ったあと」


指がスマホの角をなぞる。


「既読ついた瞬間」


一拍。


「返事、来ないと」


少し笑う。


「めちゃくちゃ考えちゃう」


遥は視線を机に落としたまま聞く。


「変なこと言ったかなとか

怒らせたかなとか

無視されてるのかなとか」


言葉が並ぶ。


「数分なのに」


少し間。


「めちゃくちゃ長く感じる」


遥は窓の外を一度だけ見る。


「何分くらいだ」

「……たぶん、五分とか」

「短いな」


即答だった。

生徒は苦笑する。


「分かってます」


一拍。


「でも」


声が小さくなる。


「五分で、関係終わる気がするんです」


遥は、机の端に指を置く。


「終わらない」


短い。

生徒は目を上げる。


「そうですか」

「五分で終わる関係は」


一拍。


「五分前から終わってる」


教室が静かになる。

生徒は少しだけ黙る。


「……それも怖いです」


正直な声。

遥は否定しない。


「既読はな」


ゆっくり言う。


「相手の時間を見えるようにしただけだ」


生徒は首を傾げる。


「時間?」

「相手は、お前のメッセージ以外にも生きてる」


窓の外で風が鳴る。


「飯も食うし風呂も入るし別のやつとも話す」


一拍。


「その五分が、たまたまお前の番じゃなかっただけだ」


生徒はスマホを見る。


「……でも」

「気になるなら」


遥は言葉を重ねる。


「一つだけ決めろ」


生徒が顔を上げる。


「送ったあと、スマホ置く時間」


一拍。


「十分」

「十分?」

「それまでは見ない」


生徒は少し笑う。


「無理そうです」


遥は肩を少しだけ動かす。


「じゃあ三分」


即座に下げる。


「三分なら」


生徒は少し考える。


「いけるかも」


遥は頷かない。


「既読の怖さはな」


静かな声。


「“待ってる自分”をずっと見てるから増える」


机の木目を指でなぞる。


「目を離す時間を自分で作れ」


生徒は、スマホをポケットに入れる。


「……やってみます」


立ち上がる。

扉の前で振り返る。


「でも」


少し笑う。


「三分で見ちゃったら」


遥は答える。


「また三分だ」


短い。

生徒は笑った。

扉が閉まる。

教室は、また静かになる。


窓から入る風が、机の紙を揺らす。

遥はそれを押さえる。

廊下の奥で、また足音が止まった。

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