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コメント欄は加熱し続けていた。
数字が跳ね、嘲笑と要求が止まらない。
《3000》
《3500》
《4000》
《泣かせ続けろ》
《もっと喋らせて》
《反抗演出入れろ》
《壊れそうで草》
檻の中、遥は顔を伏せていた。
涙は止まらない。
体は震え、肩は上下し、呼吸がまともにできない。
だが——“終わらない”。
「ほら。聞こえてんだろ。
“もっと泣け”ってさ」
高科が檻の鍵を揺らす。
金属が低い音を立てるたびに、遥の体が跳ねた。
「……もう……むり……」
「無理じゃねえよ。
壊れてからが本番だろ?」
《壊せ》
《限界突破しろ奴隷》
《動物みたいに鳴かせろ》
高科はゆっくりベルトを引き抜く。
鋲のついた重い革。
その影が、檻の中の遥の肩に落ちる。
「さっき“反抗した”設定、伸びてたよな。
——もう一度いくか」
「……して……ない……っ」
「してんだよ。配信が言ってんだから従え」
ーー叩きつける。
音が響く。
檻の鉄と皮膚の間で衝撃が跳ね返り、遥の背中が丸く折れた。
「っ、あ、ぁ……!」
《声いい》
《もっと》
《反抗するなよ奴隷》
「ほら。言え」
高科の声は低く、凍っている。
「“反抗してすみません。
なんでもしますから、見捨てないでください”」
遥は喉を震わせた。
涙で息が詰まり、視界が揺れる。
「……はんこう……して……すみません……
なんでも……する……から……すて……ないで……」
《伸びた》
《最高に壊れてきた》
《従順度神》
高科はスマホ画面を見ながら、満足そうに笑う。
「よし。じゃあ——入札、最終段階いくぞ」
黒板の下、入札額が手書きで更新されていく。
数字はすでに五桁に近い。
「今、トップ入札者は——
“アカウント:kuro-〇〇”だな」
《勝てねぇ》
《こいつ毎回金入れてるやつ》
《ガチ勢》
「じゃあトップが“動作確認”見たいってよ。
遥、前に寄れ」
檻の隙間から引きずり出される。
鉄格子に胸を押しつけられ、逃げ場はない。
高科はスマホを至近距離に近づけ、遥の泣き顔を捉えた。
「ほら、見てるぞ。言え」
「……っ……なにを……」
「“落札者様……お望みのままに……従います……”だ」
遥は歯を嚙みしめた。
屈辱と恐怖で声が震える。
「……らくさつしゃ……さま……
おのぞみの……ままに……
……したが……います……」
画面が爆発したようにコメントで埋まる。
《勝ち確》
《ガチ勢やば》
《買われた奴隷w》
《今日一の名シーン》
《壊れ方がリアルすぎ》
高科が勝手に宣言した。
「——落札決定。
本日の奴隷、No.0 “遥”。
落札者は《kuro-〇〇》」
教室が拍手と笑いで満たされる。
遥は崩れ落ちた。
膝が抜け、もう声も出ない。
高科はスマホを掲げたまま言う。
「じゃあラスト。
“壊れるまで”ってリクエストに答えるぞ」
ベルトを握り直し、
檻に閉じ込められた遥に影が落ちる。
「大丈夫だよ、遥。
——お前が壊れても、動画は伸びるから」
金属音が鳴った。
泣き声が潰れた。
コメント欄は祭りのように盛り上がり続けた。
《泣け》
《まだ壊せる》
《終わらせんな》
《最高の奴隷》
《また明日も配信しろよ》
その中で、遥の声だけが小さく残った。
「……やだ……もう……いやだ……
……たすけ……」
——誰にも届かないまま。
高科はその声すら“商品価値”として切り取った。
「はい、終了。
《kuro-〇〇》さん、明日の“受け渡し式”もお楽しみに」
配信が切られる。
沈黙は戻らなかった。
ただ嘲笑と光る画面が、檻の中の遥を淡く照らし続けていた。