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夜。
暖房の音が低く続いている。
真白はソファの端に座って、スマホをいじっている。
画面はスクロールされているけれど、あまり読んでいない。
アレクシスは隣にいる。
同じソファ。
距離は拳ひとつ分。
近い。
でも、触れてはいない。
「寒い?」
アレクシスが聞く。
「別に」
そう言いながら、真白は少しだけ肩をすくめる。
アレクシスは何も言わず、ブランケットを取る。
真白の膝にかける。
「……ありがと」
視線はまだ画面。
少し間。
アレクシスの指先が、ブランケットの端を直す。
ほんの一瞬、真白の手の甲に触れる。
真白はそのまま動かない。
逃げない。
掴まない。
ただ、その温度を感じている。
「ねえ」
真白が言う。
「うん?」
「さっきさ」
「うん」
「会社で、褒められた」
アレクシスは少し目を細める。
「何を」
「調整。細かいとこ」
「すごい」
「地味」
「でも必要」
真白は小さく笑う。
「アレク、そういう言い方するよね」
「どんな」
「ちゃんと見てる感じ」
スマホを置く。
今度はちゃんと視線を向ける。
「俺さ」
「うん」
「分かりやすい評価より」
少し迷う。
「アレクに分かってもらえる方が、嬉しい」
空気が少し止まる。
アレクシスはすぐに何か言わない。
ただ、ゆっくり真白を見る。
「俺も」
静かに返す。
「何が」
「真白に分かってもらえると、安心する」
言葉は淡い。
でも、重みがある。
真白はブランケットの端を握る。
「安心ってさ」
「うん」
「依存と違うよね」
少しだけ尖る。
アレクシスは少し考える。
「違うと思う」
「どう違う」
「依存は、いないと立てない」
間。
「安心は、いなくても立てるけど、いると楽」
真白はゆっくり瞬きをする。
「……ずるい答え」
「ずるい?」
「刺さる」
小さく笑う。
少し沈黙。
真白がブランケットの中で手を動かす。
そして、そっと。
アレクシスの指先に触れる。
掴まない。
絡めない。
ただ、触れるだけ。
でも、今度は離さない。
「いなくても立てるよ」
真白が言う。
「うん」
「でも、いると楽」
視線を逸らす。
「だから、いる」
その言葉は、告白より静かで、
でもずっと深い。
アレクシスは指先を少しだけ返す。
強くしない。
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「俺も」
短く。
暖房の音が続く。
触れている面積は小さい。
でも、確かに繋がっている。
触れなくても好き、じゃない。
触れたから分かる好き。
派手じゃない。
でも、刺さる。
真白は小さく息を吐く。
「……今日、ここで寝てもいい?」
「風邪ひく」
「じゃあ運んで」
「重い」
「うるさい」
でも、手はまだ離れない。
小さな温度が、
ゆっくり胸の奥に残る。