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#執着攻め
𝐋𝐢𝐜𝐡𝐭
#推しカプ
放課後。
体育倉庫の奥――普段誰も来ない死角のスペース。
そこがもう、俺専用の“調教場”みたいになっていた。
裸電球一つ。
床に敷かれたゴムマット。
隅には、昨日より明らかに強化された鉄製の“檻”。
横には、ベルトが三本。
見た瞬間、息が止まった。
「お、来た来た。逃げねぇの偉いじゃん。
じゃあ、喋る練習やろっか?」
軽い声。
でも笑っていない。
「昨日の台本もう読んだ? まあ読んでなくてもいいや。
まずこれからな」
リーダー格の男子が、ベルトを持ち上げて軽く振る。
空気を切る音が生々しい。
「“喋れない”と撮れねーの。
だから声、ちゃんと出るようにしてやるよ」
ベルトで肩を叩く。
軽い。
だけど、それが“始まり”なのが分かる。
「立て」
従った瞬間、胸ぐらを掴まれ、壁に押しつけられた。
背中に硬いコンクリの感触。
そのまま、ベルトの先が俺の頬をなぞる。
「ほら。言ってみ? 昨日のやつ」
「……な、何だよ……」
「“ご主人様の指示に従います”。
ほら、言えよ」
「……言わねぇ……」
言った瞬間、自分でも分かった。
これは悪手だ、と。
直後、腹にベルトのバックル側が叩き込まれた。
「ぐっ……!」
「ねぇ。“言わねぇ”とかいらないの。
台本にないセリフ言うなよ。編集めんどいから」
もう一人が俺の腕を後ろに回し、ベルトで拘束し始める。
ぎゅっと締められ、手首が擦れて痛い。
「おー、いいじゃん。檻入れる前の“躾”っぽい」
「じゃ、もう一回な。
“ご主人様の指示に従います”」
言わない。
言いたくない。
でも沈黙の数秒が地獄を呼ぶ。
「よし」
ベルトが振り下ろされる――
背中、腰、太もも。
打たれるたび、呼吸が乱れ、膝が抜けそうになる。
「……っ、やめ……」
「“やめ”じゃないだろ。
言えよ。セリフ」
「……ぁ……」
「もっと聞こえるように言えって。
声ちっせぇんだよ、お前」
胸ぐらを掴まれ、顔を無理やり上げられる。
「はい、言って」
「……ご……ご主人……様の……指示に……従い……ます……」
「はい最高。
この trembling(震え声)、マジで使えるわ」
後ろでスマホの録画音がした。
「次、“よろしくお願いします”」
「……っ……」
「言えって」
耳元でベルトが鳴らされる。
手首が痛くて、足が震えて、声がうまく出ない。
なのに、彼らはそれを“演出”の一部として楽しんでいた。
「“よろしくお願いします”」
逃げ場はない。
言うしかない。
「……よろしく……お願いします……」
「うわ、完璧。
泣きそうなの逆にいいな。涙出るまで撮る?」
「後で。まず台本の最後な。
“頑張ります”」
何に?
誰に?
どうして?
全部分かってる。
全部、無意味な問いだ。
「……が、んばり……ます……」
「はーいできた。
はい拍手。こいつ、声の仕上がり良くなってきたな」
笑いが上がる。
「じゃ、次。
檻に入って“セリフ+怯え顔”の練習な」
「セリフ弱かったらベルトで調整するからさ。
逃げんなよ?」
逃げたらどうなるかなんて――
昨日までの動画を思えば分かりすぎるほど分かる。
檻の扉が開いた。
金属の軋む音が、妙に長く響いた。
「ほら、入れ」
足が震えたまま、鉄の中に入る。
扉が、ゆっくり、閉まる。
ガチャン。
その音で、全部が確定した。
「よし、“本番前の調整”始めよーか」
ライトが点き、スマホが向けられる。
俺の声は、逃げ場のない鉄の箱の中で、
無理やり“商品仕様”へと作り変えられていく。
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