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放課後。
体育倉庫の奥――普段誰も来ない死角のスペース。
そこがもう、俺専用の“調教場”みたいになっていた。
裸電球一つ。
床に敷かれたゴムマット。
隅には、昨日より明らかに強化された鉄製の“檻”。
横には、ベルトが三本。
見た瞬間、息が止まった。
「お、来た来た。逃げねぇの偉いじゃん。
じゃあ、喋る練習やろっか?」
軽い声。
でも笑っていない。
「昨日の台本もう読んだ? まあ読んでなくてもいいや。
まずこれからな」
リーダー格の男子が、ベルトを持ち上げて軽く振る。
空気を切る音が生々しい。
「“喋れない”と撮れねーの。
だから声、ちゃんと出るようにしてやるよ」
ベルトで肩を叩く。
軽い。
だけど、それが“始まり”なのが分かる。
「立て」
従った瞬間、胸ぐらを掴まれ、壁に押しつけられた。
背中に硬いコンクリの感触。
そのまま、ベルトの先が俺の頬をなぞる。
「ほら。言ってみ? 昨日のやつ」
「……な、何だよ……」
「“ご主人様の指示に従います”。
ほら、言えよ」
「……言わねぇ……」
言った瞬間、自分でも分かった。
これは悪手だ、と。
直後、腹にベルトのバックル側が叩き込まれた。
「ぐっ……!」
「ねぇ。“言わねぇ”とかいらないの。
台本にないセリフ言うなよ。編集めんどいから」
もう一人が俺の腕を後ろに回し、ベルトで拘束し始める。
ぎゅっと締められ、手首が擦れて痛い。
「おー、いいじゃん。檻入れる前の“躾”っぽい」
「じゃ、もう一回な。
“ご主人様の指示に従います”」
言わない。
言いたくない。
でも沈黙の数秒が地獄を呼ぶ。
「よし」
ベルトが振り下ろされる――
背中、腰、太もも。
打たれるたび、呼吸が乱れ、膝が抜けそうになる。
「……っ、やめ……」
「“やめ”じゃないだろ。
言えよ。セリフ」
「……ぁ……」
「もっと聞こえるように言えって。
声ちっせぇんだよ、お前」
胸ぐらを掴まれ、顔を無理やり上げられる。
「はい、言って」
「……ご……ご主人……様の……指示に……従い……ます……」
「はい最高。
この trembling(震え声)、マジで使えるわ」
後ろでスマホの録画音がした。
「次、“よろしくお願いします”」
「……っ……」
「言えって」
耳元でベルトが鳴らされる。
手首が痛くて、足が震えて、声がうまく出ない。
なのに、彼らはそれを“演出”の一部として楽しんでいた。
「“よろしくお願いします”」
逃げ場はない。
言うしかない。
「……よろしく……お願いします……」
「うわ、完璧。
泣きそうなの逆にいいな。涙出るまで撮る?」
「後で。まず台本の最後な。
“頑張ります”」
何に?
誰に?
どうして?
全部分かってる。
全部、無意味な問いだ。
「……が、んばり……ます……」
「はーいできた。
はい拍手。こいつ、声の仕上がり良くなってきたな」
笑いが上がる。
「じゃ、次。
檻に入って“セリフ+怯え顔”の練習な」
「セリフ弱かったらベルトで調整するからさ。
逃げんなよ?」
逃げたらどうなるかなんて――
昨日までの動画を思えば分かりすぎるほど分かる。
檻の扉が開いた。
金属の軋む音が、妙に長く響いた。
「ほら、入れ」
足が震えたまま、鉄の中に入る。
扉が、ゆっくり、閉まる。
ガチャン。
その音で、全部が確定した。
「よし、“本番前の調整”始めよーか」
ライトが点き、スマホが向けられる。
俺の声は、逃げ場のない鉄の箱の中で、
無理やり“商品仕様”へと作り変えられていく。
#キャラ崩壊⚠️