テラーノベル
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放課後の商店街。人通りの多い通りを歩く遥の背後から、低い足音がついてくる。振り返ると、女子リーダーの美桜が、ゆっくりと近づいてきた。
「やっと二人きりになれたね、遥」
その声は甘く、だがどこか冷たく尖っている。
美桜の瞳には、いつもの教室での支配的な輝きが宿っていた。
「な、なんで……ここに……」
声はうまく出ない。体の動きもぎこちない。
街の雑踏の中でも、視線は逃げられない。
「教室では見せられない顔、見せてくれないかな?」
その言葉には、はっきりとした命令のニュアンスが含まれる。
美桜の手が、さりげなく肩に触れる。遥は反射的に後ずさるが、それすらも計算されているかのように、彼女は近づき、距離を詰める。
「学校でのこと、誰にも言わないよね?」
冷たい笑みが浮かぶ。言葉は柔らかいが、圧力は尋常ではない。
遥は口をつぐむ。どんな言葉も、ここでは反抗ではなく、次の苦痛の招待状になる。
「ほら、自覚しなよ、こんなところでも逃げられないんだ」
美桜は肩を軽く押し、遥を通行人の目から少しだけ遮るように立つ。
その体勢は巧妙で、羞恥と緊張を同時に押し付ける。
「ここでちょっと……お願いしてみよっか?」
言葉に含まれる軽い調子と、しかし底知れぬ支配欲。
遥は無言で従うしかない。反抗する言葉は、喉の奥で乾いた怒りと恐怖に押しつぶされる。
周囲の雑踏は、二人の世界を遮ることなく流れる。
だが、遥の心には鋭い痛みだけが残る。
美桜の微笑みは、教室での暴力を思い出させる。
彼女の指示や眼差しは、倉庫での陰キャたちの妄想と同じくらい、圧迫的で逃げ場のないものだった。
「覚えておいて、これからもあなたのこと、ずっと見てるから」
その言葉に、遥の肩は震え、息は浅くなる。
街の明かりも、喧騒も、すべてが美桜の意図した“観客席”に変わる。
ここで感じる羞恥や恐怖は、教室や倉庫のときよりも、より露骨に、より現実的に響いた。
美桜の一歩一歩が、遥の胸を押しつぶす。
そして、遥の目には、逃げ場のない孤独と、誰も助けてくれない現実が、はっきりと映るのだった。
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