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遥の相談室3

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遥の相談室3

35 - 第35話 嫌われてないのに不安

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2026年03月17日

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放課後の光は、黒板の半分だけを照らしていた。

教室の奥は少し暗い。


机を挟んで、生徒が座っている。

カバンは椅子の背。

両手は膝の上。

少し考えてから言った。


「……たぶん」

言葉を探す。

「嫌われてはないんです」


遥は何も言わない。


「普通に話すし」

一拍。

「LINEも返ってくるし」


机の木目を見る。


「グループにもいるし」


沈黙。


「でも」

指先が少し動く。

「たまに」


声が少し小さくなる。


「急に不安になる」


廊下の奥で、誰かが笑う声。

すぐ遠ざかる。


「何も起きてないのに」

続ける。

「急に」

一拍。

「“あれ、もしかして嫌われてる?”って思う」


遥は机の端に指を置く。


「何かあったか」

「ないです」


即答だった。

生徒は苦笑する。


「本当に何もない」

一拍。

「だから余計に」

肩をすこしすくめる。

「自分がおかしい気がする」


沈黙。

遥は少し間を置く。


「人間はな」

ゆっくり言う。

「関係が安定すると」

一拍。

「確認したくなる」


生徒の目が少し上がる。


「確認?」


「壊れてないか」

机を軽く叩く。

「確かめる」


生徒は少し黙る。


「……壊れてないのに」

「だからだ」


遥は短く言う。

教室が静かになる。

生徒は机を見る。


「自分」

少し迷う。

「たまに」

一拍。

「わざと変なこと言いそうになります」


遥は視線を上げない。


「試すのか」


生徒は小さく笑う。


「たぶん」


沈黙。

窓の外で風が鳴る。

遥はゆっくり言う。


「試すと」

一拍。

「壊れることもある」


生徒は黙る。


「だから」

遥は続ける。

「確認の方法を変えろ」


生徒の目が動く。


「どうやって」


遥は机の端を指でなぞる。


「不安になったとき」

一拍。

「一個だけ思い出せ」


「何を」

「最後に普通に話した時」


教室が静かになる。


「その事実だけ置いとけ」


生徒は考える。


「それだけでいいんですか」

「今ある材料はそれだけだ」


短い。

沈黙。

生徒はゆっくり息を吐く。


「……確かに」

少し笑う。

「昨日普通に話してました」


遥は頷かない。

生徒は立ち上がる。

椅子が少し鳴る。

扉の前で止まる。

振り返る。


「……嫌われてないのに不安になるの」

一拍。

「自分だけじゃないですか」


遥は答える。


「多い」


短い。

生徒は少し安心した顔で笑う。


扉が閉まる。

教室はまた静かになる。


関係は、

壊れてから不安になるわけじゃない。

何も起きていない時に、

人は一番それを想像する。

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