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放課後。
教室の前の方では笑い声がしてるのに、後ろは静かだ。
生徒はその境目みたいな位置に立っている。
「自分から行くと」
間。
「迷惑な気がするんです」
遥は椅子に浅く座ったまま。
「どこに行く」
短く。
「会話とか。
輪の中とか」
一拍。
「なんか、入った瞬間」
視線が揺れる。
「空気止まりそうで」
沈黙。
「だから待つんですけど」
小さく笑う。
「待ってても来ない」
遥はすぐ返す。
「“邪魔したらどうしよう”を先に置いてるな」
短く。
生徒は黙る。
遥は机に指を置く。
「お前の頭の中だと」
一拍。
「輪の完成度が高すぎる」
教室が静まる。
「……完成度?」
遥は言う。
「もう出来上がってる空気に」
短く。
「自分が入ると壊れる、って見えてる」
沈黙。
「……はい」
小さく返る。
遥は続ける。
「でも実際の会話って」
一拍。
「そんな綺麗じゃない。
途中でズレるし。
話変わるし」
短く。
「人増えても減っても動く」
教室の空気が少し変わる。
「……でも」
生徒は言う。
「入るタイミング間違えたら変になります」
遥は否定しない。
「なる時はなる」
短く。
「でも」
一拍。
「それ、全員やってる」
沈黙。
生徒は少し止まる。
「……自分だけじゃない?」
遥は言う。
「上手いやつは」
一拍。
「変になる回数が少ないんじゃない」
短く。
「気にしてないだけだ」
教室が静まる。
生徒は苦笑する。
「それ強いな……」
遥は何も言わない。
「あと」
遥は続ける。
「お前、“迷惑”の範囲広すぎる」
生徒は顔を上げる。
「……広い?」
「少し空気止まる。
ちょっと被る」
一拍。
「それ全部、迷惑判定してる」
短く。
沈黙。
「……確かに」
小さく。
「ちょっとでもズレると、もうダメだってなります」
遥は机を軽く叩く。
「人間同士なんだから」
一拍。
「多少ズレる」
短く。
「そこ込みで回ってる」
教室の空気が少し緩む。
「じゃあ」
生徒は言う。
「どう入ればいいですか」
遥は少しだけ間を置く。
「“参加”しようとするな」
短く。
生徒は止まる。
「……え」
「“接触”くらいで入れ」
一拍。
「一言置く。
反応だけする。
近くに立つ」
短く。
「そのくらいでいい」
沈黙。
「……最初から馴染もうとしてました」
遥は言う。
「だから重い」
教室が静まる。
「輪に入る、じゃなくて」
生徒は整理するみたいに言う。
「少し触るくらい」
遥は短く言う。
「そうだ」
沈黙。
生徒はゆっくり息を吐く。
「迷惑かどうかばっか見て」
一拍。
「自分が入りたいか、見てなかったです」
遥は何も言わない。
生徒はドアの方へ歩く。
最初より、足が止まらない。
“迷惑をかけない”を優先しすぎると、
人との接点まで消える。
多少ズレながら入るくらいで、ちょうどいい。