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夜。
洗濯機が止まった音がした。
真白がソファから顔を上げる。
「終わった」
「うん」
アレクシスは本を閉じた。
真白が立ち上がる。
「干す」
「一緒にやる」
「いいよ」
「いいから」
少しだけ間。
「じゃあ持ってきて」
アレクシスが洗濯機のふたを開ける。
温かい湿気が上がる。
籠に移して、部屋へ戻る。
真白はすでにハンガーを並べていた。
「早い」
「待つの嫌い」
「知ってる」
アレクシスがシャツを広げる。
しわを伸ばす。
真白は隣でタオルを干している。
しばらく無言。
洗濯物の擦れる音だけがする。
アレクシスが言う。
「これ真白の?」
黒いパーカーを持ち上げる。
「うん」
「重い」
「厚いから」
ハンガーにかける。
少しバランスが悪い。
真白が直す。
「こう」
「ありがとう」
また少し沈黙。
真白が言う。
「靴下どこ行った?」
「何が」
「片方ない」
アレクシスが籠を見る。
「あるよ」
「どれ」
「これ」
「違う」
「同じに見える」
「違う」
真白が取り上げる。
「こっち」
「分からない」
「ちゃんと見て」
「見てる」
真白が並べる。
「ここ」
「……あ」
「柄」
「ほんとだ」
少し笑う。
「前もあった」
「うん」
「俺の靴下、消える」
「洗濯機の中じゃない?」
アレクシスがもう一度見に行く。
少しして戻る。
「なかった」
「じゃあ消えた」
「そんなことある?」
「ある」
真白は真顔。
アレクシスは笑う。
「そのうち出てくる」
「前もそう言って出てこなかった」
真白は最後のタオルを干す。
手を下ろす。
「終わり」
「終わり」
並んだ洗濯物が揺れている。
暖房の風が少し当たる。
真白が一歩下がる。
「なんかさ」
「うん?」
「干してあると生活って感じする」
「するね」
「嫌じゃない」
ぽつりと言う。
アレクシスは少しだけ微笑む。
「俺も好き」
「何が」
「こういうの」
真白は少しだけ肩をすくめる。
「地味」
「うん」
「でもいい」
そのまま隣に立つ。
並んだシャツの間に、少しだけ隙間がある。
真白が袖を整える。
指先が布をなぞる。
アレクシスが言う。
「これ乾いたら着る?」
「うん」
「似合う」
「知ってる」
真白が言う。
少し間。
「アレクが選んだから」
小さく付け足す。
アレクシスは何も言わない。
ただ少しだけ近くに立つ。
洗濯物の匂いがする。
柔らかい匂い。
冬の夜の中で、
部屋の中だけが少し温かかった。