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#学園
大正
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#ファンタジー
柘榴とAI

91
王宮の大会議室には、久しぶりに神殿の使者が呼ばれていた。
高い天井の下に長い円卓が置かれ、その周囲に貴族と官僚が並んでいる。
壁には王家の紋章と神殿の象徴が並んで掲げられていた。
二つの権威が同じ空間に置かれるのは珍しいことではないが、今日の空気は明らかに張りつめていた。
議題は一つだった。
星の理論。
そして王妃制度。
神殿の高位司祭が静かに口を開いた。
「まず確認したい」
声は落ち着いている。
「星は神の奇跡です」
貴族たちは黙って聞いている。
「古くからの記録が示している。王妃は神に選ばれ、愛によって星を生む」
彼はゆっくり言葉を続けた。
「それがこの国の秩序です」
財務卿が静かに返す。
「しかし観測記録は別の結果を示しています」
机の上に資料が置かれる。
学術院の新理論だった。
星は恋愛だけでなく、友情や家族関係でも生まれるという報告。
司祭は紙を見てから、ゆっくり首を振った。
「誤解です」
「誤解?」
「星は神の祝福です」
司祭の声は少し強くなる。
「人の関係から自然に生まれるものではない」
学官が言う。
「ですが実際に観測されています」
「それは偶然か、誤った解釈です」
沈黙が落ちる。
王太子は椅子に座ったままそのやり取りを見ていた。
議論は長く続く。
学者たちは記録を提示し、神殿は教義を主張する。
どちらも簡単には譲らない。
だが問題は一つだった。
星は増え続けている。
王宮外でも。
恋愛以外でも。
その事実だけは、誰も否定できなかった。
やがて王太子が口を開く。
「一つ聞く」
全員が彼を見る。
「もし星が神の奇跡なら」
彼は言う。
「なぜ王宮外で増えている」
司祭はすぐ答える。
「神の意思です」
「なるほど」
王太子は頷く。
「ではもう一つ」
彼は続ける。
「なぜ恋人以外でも出る」
司祭は少し黙った。
「神の祝福は多様です」
その答えに、何人かの貴族が視線を交わす。
王太子は小さく笑った。
「便利な説明だ」
司祭の眉がわずかに動く。
「殿下」
「怒るな」
王太子は手を軽く振った。
「責めているわけではない」
彼は窓の外を見た。
昼の空は曇っている。
「ただ」
彼は言う。
「説明が変わっただけだ」
沈黙。
「昔は王妃だけが星を生むと言った。
今は神の祝福だと言う」
王太子はゆっくり振り返る。
「つまり」
彼は言った。
「王妃制度は説明の一つにすぎない」
その言葉は重かった。
会議室の空気が変わる。
王妃制度はこの国の象徴だった。
王妃が星を生むという思想は、王家の権威と結びついている。
それがただの「説明の一つ」になるなら、制度の意味は大きく変わる。
財務卿が静かに言う。
「殿下」
「何だ」
「もしその理論を認めれば」
彼は言葉を選んだ。
「王妃制度は成立しません」
王太子は頷く。
「そうだろうな」
司祭が言う。
「それは国家の秩序を崩す」
「秩序は星ではなく人間で作る」
王太子の声は穏やかだった。
「星がなくても国は存在する」
そのとき、観測官が会議室に入ってきた。息を切らしている。
「失礼します」
彼は紙を差し出す。
「緊急の観測報告です」
王太子が受け取る。
紙には短い文章が書かれていた。
新しい星の観測。
場所は王都中央。
王宮ではない。
そして恋人関係でもない。
老夫婦の家だった。
二人は五十年以上連れ添っているという。
王太子はその紙を見て、静かに机に置いた。
「これで分かるだろう」
彼は言う。
「星は王宮のものではない」
沈黙が続く。
王妃制度はまだ正式には廃止されていない。
だがその日、会議室にいた多くの人間は理解していた。
制度はすでに崩れ始めている。
星が増えるたびに。
その夜、王宮の空にもまた新しい無色星が現れた。
色はない。
だが静かに、確かに光っていた。
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