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最初は、ただ興味だった。
仕事として見れば、ああいうタイプは効率がいい。
客の機嫌を取りすぎない。
かといって、突き放しもしない。
距離の置き方が計算じゃなくて、癖に近い。
だから見ていた。
誰にでも同じようで、同じじゃない。
線を引くところがある。
その線が、自分の都合じゃなくて、相手の都合でもなくて、「ここまで」と決まっている。
ああいう人間は、長く続く。
そう思っていた。
だから、指名はしていなかった。
評価と指名は、別だ。
混ぜると、判断が鈍る。
けれど、ある日、別の席で笑っているのを見た。
大きく笑うわけじゃない。
声も高くない。
ただ、一瞬だけ気を抜いた顔。
その顔を、仕事用じゃないと思った。
そこで、初めて、判断が狂った。
ああ、と思った。
これは、評価の範囲じゃない。
危ないな、とも思った。自分にとって。
だから、余計に、指名しなかった。
距離を取れば、収まると思っていた。
収まらなかった。
来店頻度は変わらない。
話す内容も変わらない。
何も変えていないのに、
気づくと、店に入った瞬間、探している。
視界に入ると、安心する。
帰り際、別の席に座っていると、少しだけ、気分が悪い。
これは、評価じゃない。
分かっている。
だから、まだ、名前を聞いていない。
聞いたら、変わる気がする。
変わらないまま、続けたい。
でも、続けたいと思っている時点で、もう、変わっている。