テラーノベル
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「ねぇ、今日の企画どうする? “商品レビュー”やるって言ったよね」
美桜が、スマホを机にトンと置く。画面には、落札後の動画の切り抜きが静止している。
「うん、“実際どう使えるか”ってやつ。てか、男どもがやってるのより、ウチらの方が絶対おもしろくできるって」
「そりゃそう。あいつ、女子のが効くじゃん。顔真っ赤になるし」
「今日は遠慮なくいこ? “商品の性能チェック”なんだからさ」
笑いながら、視線はすでに遥の席へ吸い寄せられている。
「——遥、ちょっと来て」
美桜の声は、命令でも怒気でもない。ただ、抗えない。
遥は一瞬だけ肩を震わせ、椅子を引いた。
「……何」
「レビュー。今日の企画ね。協力して?」
返事を待っていないことは、誰の目にも明らかだった。
黒板前。女子たちが円をつくる。中心に遥。
その空間にだけ、凍りついた空気が沈んでいる。
美桜がスマホを構えながら言った。
「じゃ、まず第一項目。“素直さ”。
ねぇ遥、自分の立場、言って?」
遥は唇を噛み、視線を落とす。
しかし避けても許されないことを知っている。
「……俺は……奴隷、で……」
「声小さーい。レビューになんないよ」
「はい、やり直し」
美桜が顎を指で持ち上げる。
目が合う。逃げられない。
「言って。はっきり。レビュー動画だから」
「……俺は、みんなの……奴隷です……」
空気が軽くざわつく。
女子たちが満足げに頷く。
「はい、“素直さ:星5”。文句なし」
別の女子が指を鳴らす。
「次、“扱いやすさ”。ちょっと揺らしてみよっか」
遥の肩をつかみ、乱暴に押す。
バランスを崩し、机に腕をぶつける。
「痛い?」
「……いっ……て……」
「お、大丈夫って言うと思ったのに。まあいっか、正直なのもレビューしやすいし」
さらに後ろから押され、膝を床につかされる。
制服が汚れ、周囲が笑う。
「床に膝つくスピード速っ。はい、“扱いやすさ:星4.8”。ちょっとだけビビるのが減点」
「慣れさせよ。次からもっと早くね?」
遥の拳が震える。自分でも気づかないほど小さく。
美桜がスマホを近づけ、遥の顔をアップで撮る。
「ねぇ、レビュー企画なんだからさ、“おすすめポイント”言ってよ。
自分で。自分の価値、宣伝して?」
遥の喉が詰まる。
それを見て、美桜は笑った。
「ほら、“商品の声”は大事でしょ?」
「……俺は……えっと……」
声が震える。美桜が首を傾ける。
「時間かけるとカット面倒だから。早く」
「……なんでも……命令されれば……やります……」
「もう一つ」
「……逆らいません……」
「もう一つ」
「……みんなの……好きに……できる……から……」
女子たちが拍手した。
「はい、“追加機能:自己宣伝の素直さ 5点”。優秀ー!」
美桜が指で遥の頬を押し、わざと赤くさせる。
「ねぇ、これ見て。“反応いいね”ってコメント絶対来る」
「男子より女子の方が反応出すんだねー、あんた」
「もしかして女子の前の方が緊張してる? かわいそ」
遥は苦しそうに息を飲む。
「……やめ……て……」
その言葉すら、小さな玩具音のように扱われる。
「はい、“表情変化:星5”。いちばん評価高いかも」
美桜がスマホを回し撮りしながら言う。
「総合評価——
“美桜’sチームによる商品レビュー:星4.9”。
女子でも扱いやすく、反応が良く、命令理解度高め。
今後の伸びしろも期待大」
遥は膝をついたまま、呼吸が乱れている。
「じゃ、次回は“女子目線の使い方講座”やるから。
男子より盛り上げられるよう、ちゃんと練習しといてね?」
「……っ……も……無理……」
「無理とか言う権利ないよ? “商品”なんだから」
美桜はさらりと言い、動画を止めた。
「アップするの、今日の夜でいいよね?」
女子たちの笑い声が広がり、
遥の世界だけが、沈むように暗く狭くなっていった。
𝐚𝐨𝐢
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