テラーノベル
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扉が閉まる音が消えた瞬間だった。
廊下の向こうから、
複数の足音がゆっくり、ゆっくりと近づいてきた。
(……最悪だ。
“あいつら”の足音だ)
ドアが乱暴に開かれた。
「いたいた。
“お楽しみ”途中で終わらせて、悪かったよな?」
先頭にいたのは、さっき嘘を作った張本人の女子のいとこ。
後ろに男子たちがぞろぞろと続く。
彼らの顔には、悪びれも緊張もない。
年に一度の恒例行事の続きという空気しかない。
「お仕置き部屋ってさ、ほんと便利だよね」
「大人が勝手に閉じ込めてくれるし」
「俺らが来ても誰も疑わないし」
笑い声だけが重なっていく。
遥は鎖に繋がれた手首をかばいながら体を起こした。
(来る……
もう止められない)
「ねぇ遥。さっきの“冤罪”、まだ信じてる人いるよ?」
「大人全員だよ?」
女子が囁き、口元をゆがめる。
「だから、こういう“罰”も全部正当なんだよねぇ」
男子がその言葉に続ける。
「俺ら、ヒーローってことじゃん」
「“危ない奴”を止める正義の味方」
遥は乾いた喉で声を絞り出す。
「……俺、触ってなんか──」
「知ってるよ」
「お前がそんな度胸ないのも、わかってんだよ」
女子は笑って言った。
「でもね」
「“言われた側の気持ち”って、
この家では証拠より強いんだよ?」
その一言で、場が完全に閉じた。
遥には逃れる余地がない。
「じゃ、続き始めよっか」
男子たちが一気に距離を詰めた。
腕を掴まれる。
足を押さえつけられる。
鈍い衝撃が数度、体に落ちる。
殴る音ではなく、
湿った壁に叩きつけられるような“重さ”。
空気が肺から抜け、視界が白む。
女子がその様子を眺めながら言う。
「ねぇ、どんな気分?」
「“やってないのに罰される”って」
男子たちは笑いながら続ける。
「冤罪ってさ、一番逃げようがなくていいよな」
「罪より、“疑われる空気”がキツいっていうか」
(……わかってる。
俺が何言っても、
この空気は変わらない)
遥は、息を吸うだけで苦しい。
「顔あげてみ?」
女子が覗き込む。
「“反論する気のない顔”してる」
「それ、すごく似合う」
男子が笑い声を上げる。
「じゃあさ──」
遥の髪を乱暴につかみ、顔を無理やり上げる。
「“なんで殴られてるかわかってます”って言えよ」
遥の唇が震える。
「……わかって……ない……」
「は? まだ言う?」
足が遥の脇腹を蹴り上げた。
視界が揺れる。
(痛い……でも……)
(言わなきゃ、もっと──)
「……わかって……ます……」
ようやく言葉になると、いとこたちは満足したように笑った。
「ほら、言えるじゃん」
「最初からそうしとけばよかったんだよ」
女子が近づいて、囁く。
「この部屋、外に声聞こえないからさ」
「泣き声でも叫び声でも、ご自由に」
(泣かない……)
(泣くもんか……)
しかし胸の奥で何かがひび割れるような音がした。
「──じゃ、ラストいくか」
いとこの拳がゆっくりと上がり──
場面は、そこで暗転した。
#ジェイク推し
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