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𝐚𝐨𝐢
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昇降口。
机が二つに増え、人の数は倍。
「今日もショーやるらしいぞ」
「命令増えるってよ」
ざわめきが、祭りの前みたいに熱い。
高科が遥の肩をつかんで前へ引きずる。
抵抗した瞬間、腹に蹴りが入った。
ドスッ。
「はい、一発目。“開幕あいさつ”な。
ほら、前出ろよ。遅い」
胃のあたりが焼けるように痛い。
遥は息を詰めながら机の前へ立つ。
美桜がスマホを向けながら言った。
「今日のテーマは“命令の数を増やす”。
昨日より“分かりやすい形”でやるから」
周囲が笑い、歓声が上がる。
高科が遥の前に立つ。
「じゃあ最初。“自分の立場を言え”。
昨日よりハッキリ、全員に届く声で」
遥は唇を震わせる。
「……お、俺は……」
頬に平手が飛ぶ。
パァン。
視界が揺れ、髪が跳ねた。
「声小さいっつってんだろ。やり直し」
「……命令……に……従う……立場……です……」
美桜が笑う。
「可愛いねぇ。“昨日より素直”ってコメント来そう」
高科が指を鳴らす。
「返事の練習。三段階でやるぞ。
1、即答
2、震えてても答える
3、泣きながらでも答える」
「……や……」
太ももへ蹴り。
ガッ。
遥の身体が傾く。
「逃げんな。はい、“1”」
「はい……」
「“2”」
「……は、い……」
「“3”」
高科が指で遥の顎を上げる。
「泣けよ。泣きながら言え」
唇を噛み、声が漏れた。
「……っ……はい……っ……」
廊下が、湧いた。
美桜がスマホを掲げる。
「コメントで来てたやつ。“自分で自分を下げろ”って。
はい、“自分の名前の前に奴隷つけて名乗って”」
遥は震えながら喉を搾る。
「……奴隷……はる……」
高科が腹を殴る。
ドン。
呼吸が止まる。
「もっとハッキリ。“商品名”なんだから」
「……奴隷……遥……です……」
美桜が満足そうに頷く。
「ほらできた。
じゃあ次、“自分の価値を説明して”。
身体的特徴でも、役に立つことでも、なんでも」
遥は苦しげに息を吸った。
「……ひ、必要なとき……命令……聞け……ます……
……拒否……しません……」
「拒否しません、だけ?
もっと言えるよね?」
高科が肩を掴み、壁に押しつける。
「“誰が相手でも逆らいません”って言え」
「……だ、誰が……相手でも……逆らいません……」
歓声。
「はい耐久コーナー行きまーす」
男子数人が前に集まり、スマホを構える。
「今日のメニュー、“立たせたまま叩いて質問に答えさせる”」
平手が頬を打つ。
パシッ。
すぐに質問。
「お前の役割は?」
「……め……命令に従う……」
また平手。
パァン。
「逃げられんの?」
「……に、逃げ……ません……」
後頭部をつかまれ、無理やり視線を上げられる。
「“逃げられない理由”言え」
「……っ……俺に……権利……ない……から……」
美桜が満足げにスマホを近づける。
「はい、“顔アップ”撮れた。
今日のショーはこれで終わり。
次は“命令種類もっと増やすスペシャル”やるから、 昼休み全員来るように」
生徒たちは笑いながら散り、
遥だけが壁にもたれて座り込んだ。
喉は枯れ、頬は赤く腫れ、
声を発するたび、肺が痛んだ。
それでも、
“次のショーがある”という事実だけが、
身体のどこかを冷たく締め上げた。