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星の消失は、完全には止まらなかった。
だが、最初の数日に比べれば速度は落ちていた。
観測塔の記録では、夜ごとの消失数は少しずつ減っている。
それでも空は以前とは違っていた。
王都の夜空には広い闇がある。
かつて無数にあった色の星は、多くが消えていた。
残っているのは――
無色星。
王宮の観測塔では、最後の会議が開かれていた。
学官、観測官、そして王太子。
机の上には記録が並んでいる。
「結論は出ません」
学術院の代表が言った。
「星喰いの正体は不明」
「発生条件も不明」
彼は紙を指した。
「ただ一つ、確かなことがあります」
王太子が顔を上げる。
「無色星は消えない」
学官は頷いた。
「現在までの観測では例外がありません」
部屋の空気は静かだった。
最初は異常だと思われた星。
分類できない関係の光。
それが今、夜空に残っている。
「理由は」
王太子が聞く。
学官は首を振る。
「分かりません」
少し間を置いて続ける。
「ただ、仮説はあります」
「聞こう」
学官はゆっくり言った。
「星は関係から生まれる」
「これは多くの観測と一致しています」
彼は紙をめくる。
「ですが人間の関係は分類できません」
恋人。
友人。
家族。
それらは便宜的な名前にすぎない。
人と人のあいだには、もっと曖昧で複雑な関係がある。
「無色星は」
学官は言う。
「その分類の外にある関係から生まれている可能性があります」
王太子は黙って聞いていた。
「つまり」
彼が言う。
「名前のつかない関係」
学官は頷く。
「あるいは
人が選び続ける関係」
部屋の誰も、すぐには言葉を出さなかった。
星喰いの理由は分からない。
星が消える理由も分からない。
ただ一つ分かっているのは。
すべての星が消えたわけではないということだった。
その夜、王宮の庭園ではエリュネが空を見上げていた。
王太子が隣に立つ。
しばらく二人は黙って空を見ている。
闇の中に、いくつかの光。
色のない星。
「減りましたね」
エリュネが言う。
「ああ」
王太子は答える。
「でも消えていない」
エリュネは無色星を見た。
静かな光だった。
強くも弱くもない。
ただそこにある光。
「星は」
彼女が言う。
「不思議ですね」
「どういう意味だ」
「人が理由を探すほど」
彼女は少し笑う。
「分からなくなる」
王太子も空を見た。
星は確かにある。
だが、その意味を人間が完全に理解できるとは思えなかった。
「それでも」
エリュネが続ける。
「人は関係を作ります。
星があってもなくても」
王太子は少し考えた。
そして言う。
「星は」
彼は夜空を指した。
「結果にすぎないのかもしれないな」
エリュネは頷いた。
人と人が出会う。
関係が生まれる。
続くこともあれば、終わることもある。
それでも人はまた誰かと関わる。
空の星とは関係なく。
その夜、王宮の上空にも無色星が静かに光っていた。
星喰いはまだどこかにいる。
理由は分からない。
夜空の意味も、完全には解けていない。
それでも世界は動いている。
人は誰かを選び、
関係を作り、
また明日を迎える。
星が消える夜のあとでも。
空にはまだ光が残っていた。
そしてその光は、これからもどこかで生まれ続けるのだろう。
理由が分からないままでも。
第二章・完
麗太
海の紅月くらげさん